兵隊やくざ

『兵隊やくざ』：戦争と友情、そしてやくざの生き様

1965年、大映京都撮影所のプロデューサー久保寺生郎の手によって製作された『兵隊やくざ』は、勝新太郎主演、増村保造監督という豪華な布陣で贈る戦争映画です。本作は、有馬頼義の小説『貴三郎一代』を原作としており、シリーズ化されるほどの成功を収めました。

舞台は1943年、ソ連との国境に近い満州。4万もの兵力を擁する関東軍の駐屯地で、物語は幕を開けます。主人公は浪花節語りになれず、やくざとして用心棒を生業にしていた大宮貴三郎（勝新太郎）。彼は満州へ入隊し、そこで出会うのが、名家の出身で大学卒というエリート兵士でありながら、意図的に幹部候補生試験を落第した有田上等兵（田村高廣）です。

大宮の傲慢な態度と行動は、古参兵たちの反感を買い、砲兵隊の乙種幹部候補生である黒金伍長（北城寿太郎）から痛めつけられます。しかし、有田の助けによって窮地を脱し、大宮は有田を深く敬愛するようになります。

その後、全師団合同大演習の場で、軍曹に昇進した黒金と再会した有田は再び暴行を受け、それがきっかけで歩兵隊と砲兵隊の大喧嘩へと発展します。この騒動の後、大宮は外出禁止処分を受けますが、兵舎を脱走し、将校専用の芸者屋で音丸（淡路恵子）と遊んだことから事態はさらに複雑になります。しかし、有田は自分の責任でこれを許し、大宮への制裁を代わりに負うのです。

戦況の悪化により、有田の満期除隊の可能性は消滅し、大宮は南方部隊への異動を命じられます。有田と離れることを望まない大宮は、規則を破って外出を繰り返し、自ら営倉入りすることでこの地にとどまろうとします。

やがて、大宮の所属する大隊全体が転進することになります。この時、大宮は有田への恩返しとして、兵隊を乗せた客車を切り離し、有田と共に機関車だけが満州の地を走り続けるという、劇的な幕切れを迎えます。

本作は、戦争の残酷さと兵士たちの葛藤をリアルに描きながらも、大宮と有田の友情を軸に、人間ドラマとして高い評価を得ています。勝新太郎の個性的な演技と、田村高廣の繊細な表現も見どころです。また、山本直純による音楽も、作品の雰囲気を盛り上げています。

『兵隊やくざ』は、単なる戦争映画にとどまらず、人間の尊厳と友情、そして生きることの意味を問いかける作品です。この映画は、シリーズ化され、多くの続編が制作されました。その中には、大映の倒産後、勝プロダクションの製作、東宝配給によって作られた『新兵隊やくざ 火線』も含まれており、シリーズ全体の成功に貢献しました。VHSやDVDなどでも発売され、現在でも多くのファンに愛されています。ブルーリボン賞を受賞した田村高廣をはじめとする豪華なキャスト陣と、増村保造監督の卓越した演出が相まって、時代を超えて魅力的な作品となっています。

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