内分分知

内分分知（ないぶんぶんち）について

内分分知とは、江戸時代に存在した武家、特に大名や旗本における独自の分家形態の一つです。この制度は、主君から土地を受け継いで新たに分家を設立する際に、本家の表高を変更することなく行われる点が特長です。これにより、家柄や地位を保持しつつ、新しい分家が設立されることが可能となります。

内分分知の背景

一般的に、分家を設立するためには、本家の領知を分配し、その表高を減少させる必要がありました。しかし、表高が大名の場合は1万石、旗本の場合は3000石を下回ると、その家格が低下することになります。家格の低下は軍役や役職への就任にも影響を及ぼします。

このため、内分分知が考案されました。この制度は、分家を設立する際に本家の表高を減少させず、家格を保持したまま新しい分家を設けることを可能にしました。

内分分知の仕組み

内分分知の具体的な形態には、以下のようなものがあります：
1. 封地を分与するが、本家の表高を減少させない形式。
2. 封地を分与するが、実際の収納高は本家が支給する形式。
3. 分家の表高だけを届け出て、収納高を本家が支給する形式。
4. 上記の内容に則り、領地を表す石高ではなく、俵単位で廩米を支給する形態。

このようにして設立された分家は、本家に強く依存し、家督相続や婚姻、さらには嫡子の継承など家庭内の事柄に影響を及ぼすだけでなく、幕府での役職就任にも関わります。さらに、本家は内分分家を親族とみなし、家庭内に留めることとなるため、内分分家の当主が本家当主の代理を務めることもしばしばありました。

主な内分支藩

内分分知を利用して設立された有名な内分支藩には、次のような藩があります：

• - 陸奥黒石藩（陸奥弘前藩の支藩）
• - 陸奥七戸藩（陸奥盛岡藩の支藩）
• - 出羽岩崎藩（出羽久保田藩の支藩）
• - 信濃埴科藩（信濃松代藩の支藩）
• - 出雲広瀬藩（出雲松江藩の支藩）
• - 土佐中村藩（土佐高知藩の支藩）
• - 肥前鹿島藩（肥前佐賀藩の支藩）などがあります。

内分分知によって設立されたこれらの藩は、武家社会において特異な位置を占め、江戸時代の政治的・社会的構造を形成する上で重要な役割を果たしました。この制度は、分家の成立が本流からの独立ではなく、本家との強い結びつきを保持していることを示しているため、分家のあり方を考える上で重要なポイントとなります。

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