内別川

内別川：北海道千歳市の豊かな湧水

北海道千歳市を流れる内別川は、石狩川水系の支流である千歳川の支流です。その名の通り、豊富な湧水に恵まれた清流として知られ、1985年には環境省により「ナイベツ川湧水」として名水百選に選定されています。

湧水と水源

内別川の水源は、千歳市西郊の支笏火山灰台地にあります。支笏湖から約24キロメートル、JR千歳駅から約5キロメートルの地点で千歳川に合流する、延長わずか2.5キロメートルの短い川です。しかしながら、その流量は0.69m3/sと豊富で、流域降水量の1.8倍にも達します。これは、60数カ所の湧水地点から絶え間なく湧き出る地下水に支えられているためです。

これらの湧水は、約42,000年前に起きた支笏火山の噴火で形成された支笏湖カルデラから噴出した軽石流堆積物層から湧出しています。中でも、源頭部の1カ所からの湧水量は0.15m3/sと、全流量の20％にも及びます。

この豊富な湧水は、千歳市の上水道水源としても利用されています。1967年に建設された蘭越浄水場は、千歳川との合流点手前に位置し、2000年からは1日5万m3の水を内別川から取水しています。名水百選への選定を記念して、1989年には浄水場に隣接して名水ふれあい公園が開設されました。公園内には内別川沿いの遊歩道や水汲み場、見学施設などが整備され、市民の憩いの場となっています。運が良ければ、7キロメートル下流のインディアン水車をくぐり抜けて遡上してきた鮭の姿を見ることができるかもしれません。

水源の保全と歴史

内別川の豊かな水資源を守るため、様々な取り組みが行われています。1969年の集中豪雨では、上流にある自衛隊演習場から土砂を含む汚水が流れ込みました。この反省を踏まえ、千歳市は自衛隊と協力して演習場内に土手を築き、植林による保水力の向上、そして浄化施設の設置など、水質保全のための対策を講じてきました。

また、1975年にはゴルフ場建設計画が持ち上がりましたが、水質汚濁への懸念から中止されました。この計画地からは遺跡が発掘され、ウサクマイ遺跡群として国の史跡に指定され、現在では保護されています。さらに、2003年には千歳市自然環境保全条例に基づき、内別川沿いの143.3ヘクタールが第一自然環境保全地区に指定され、厳格な保護・保全が行われています。この指定区域はウサクマイ遺跡群とほぼ重なっています。これらの取り組みは、内別川の自然環境と歴史的遺産を将来にわたって保護するための重要なものです。

河川名の由来

内別川の名称は、千歳川との合流地点のアイヌ語地名「nay-pu」（沢の口）に由来します。川自体にはアイヌ語の固有名称はなく、「nay」（沢）と呼ばれていたようです。「苗別川」という表記も古くから用いられていました。

内別川は、豊かな自然と歴史、そして人々の生活と深く結びついた、かけがえのない存在です。その清らかな水は、これからも千歳市民に潤いを与え続け、未来へと受け継がれていくことでしょう。

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