内奏方

内奏方とは

内奏方（ないそうがた）は、室町幕府初期に設立された重要な訴訟機関の一つです。南北朝時代中期である1340年代後半の貞和年間には、中条挙房がこの機関の頭人を務める等、その運営に関わっていました。

背景と仕組み

鎌倉幕府には、内訴（ないそ）および奏事（そうじ）という二つの直訴制度が存在していました。内訴は、執権や六波羅探題に直接訴えるものであり、奏事は評定衆や引付衆、越訴奉行といった複数の組織に受理されなかった訴えを、幕府に直に申し立てるものでした。内奏方はこの直訴制度を受け継ぎ、訴訟が適切に処理されない場合や、どの機関に訴えを提出すればよいかが不明瞭な時、あるいは審理が長引いている際に、訴えを受け付けていました。

この機関は直接的な判断を行うことはなかったものの、訴訟内容の調査や審理を担当し、その結果に基づいて適切な訴訟機関に審理を命じる権限を持っていました。これにより、合議や審理の流れを円滑にし、訴訟の解決を促進する役割を果たしていたのです。

内奏方の役割

内奏方の役割は、時として非常に重要でした。訴訟が長引く理由には、さまざまな要因がありましたが、内奏方はその仲介役を担い、官庁間の調整を試みていました。このような制度は、訴訟社会における公平さと透明性を保つためにも、非常に意義のあるものでした。

衰退と廃止

しかし、内奏方は観応の擾乱（1348年～1352年）を契機に、幕府の行政組織が崩壊することに伴って衰退していきました。観応の擾乱は、室町幕府の権力基盤を揺るがす一連の事件であり、内奏方の存在自体もこの混乱の中で徐々に重要性を失ったとされています。

足利義満の時代に入ると、内奏方は完全にその姿を消したと考えられています。この変遷は、時代の変化や政治的背景の影響を受けながら、訴訟制度が進化していったことを示しています。

参考文献

• - 五味文彦「内奏方」（『国史大辞典 10』、吉川弘文館、1989年）
• - 村尾元忠「内奏方」（『日本史大事典 5』、平凡社、1993年）

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