内田善美

内田 善美 - 日本の漫画家

内田善美（うちだ よしみ、1953年10月28日生まれ）は、日本の漫画家及びイラストレーターとして知られています。彼女は山梨県に生まれ、女子美術大学を卒業後の1974年から1986年にかけて漫画家として活躍しました。内田の作品は、特に幻想的で美しい画面構成が特徴で、彼女の代表作には『星の時計のLiddell』や『草迷宮・草空間』、さらに『空の色ににている』などがあります。

経歴

内田は美術系の大学在学中、1974年にマンガ誌『りぼん』の新人賞に応募し、短編「すみれ色の季節に」で大賞を勝ち取りました。この成功により、同年の『りぼん』7月号にて「なみの障害物レース」でプロデビューを果たしました。大学卒業までの間、彼女は漫画家一条ゆかりのアシスタントとしても活動していました。アシスタント時代、内田は一条の作品に背景などのイラストを手掛け、多くの技術を学びました。

1977年まで、内田は『りぼん』やその増刊号で短編作品を数多く発表し、特にアメリカの田舎町や日本の高校生を描く叙情的なストーリーが高く評価されました。このシリーズは内田自身によって「ドリームランドの船シリーズ」「ゲイルズバーグ・ストーリーズ」と名付けられました。また、同期間に異世界ファンタジー作品「銀河 その星狩り」も手掛けました。

内田はその後、フリーの漫画家として活動を続け、サンリオの『リリカ』や新書館の『ペーパームーン』など新刊誌でもイラストや漫画を発表しました。また、1978年からは集英社の新雑誌『ぶ〜け』に参加し、1983年まで同誌で連載を行い、多くの読者に愛されました。

彼女の作品の中でも最も長大な作品が『星の時計のLiddell』で、1982年から翌年まで連載され、全3巻として単行本化されました。しかし、1986年に完結し、これが最後の単行本となることが告げられました。内田の最後に発表された漫画は、1984年に『ぶ〜けせれくしょん』に掲載された『草迷宮－めらんこりかるShopping－』です。

活動終了後

1984年以降、内田は新作を発表せず、既刊作品の再版も行われていない状況が続いています。評論家の大泉実成は、内田にインタビューを試みましたが、内田は一切の公表を拒否したと伝えています。彼女の作品に対する関心が高まる中、特集や展示などにも作品が取り上げられました。たとえば、2014年には『芸術新潮』に過去の作品が掲載されています。さらに、2017年からは『星の時計のLiddell』がウェブサイト「マンガ図書館Z」にて無料配信されており、権利関係についての調査が進行中です。2021年時点では、彼女の作品として唯一流通しているのは、小説の表紙イラストであることが確認されています。

作風

内田の作品は幻想的で独自の美しさを持ち、「華麗で緻密で西欧的な」と評されるスタイルです。彼女はヨーロッパの絵画や挿絵から強い影響を受けており、特にラファエル前派やバーン＝ジョーンズを好んだと言われています。同世代の美大出身の少女漫画家たちとの共通点も多く、彼女の作品にはその繊細な感受性が色濃く表れています。

代表的な著書

内田善美の著書には、以下のようなものがあります：

• - 『秋のおわりのピアニシモ』 - 全1巻（1978年）
• - 『星くず色の船』 - 全1巻（1977年）
• - 『空の色ににている』 - 全1巻（1981年）
• - 『草迷宮・草空間』 - 全1巻（1985年）
• - 『星の時計のLiddell』 - 全3巻（1985-86年）

彼女の作品は、どれも美しい画面構成や豊かな物語性を持っており、現在でも多くの読者に感動を与えています。内田善美は、その独自の存在感と作品群で、少女漫画界において特別な位置を占めています。

もう一度検索