内田茂

内田茂（うちだ しげる）

内田茂は、1939年3月15日に東京都千代田区で生まれ、2022年12月21日に83歳で亡くなった日本の政治家です。東京都議会議員を7期、千代田区議会議員を4期務め、それぞれの議長も経験しました。また、自由民主党東京都連の幹事長や最高顧問も務め、都政に大きな影響力を持っていました。

生い立ちと青年期

内田茂は、千代田区神田淡路町で4人兄弟の長男として生まれました。父親の職業は、野菜の行商や鮮魚売り、額縁職人など諸説ありますが、何らかの商売をしていたことは確実とされています。千代田区立一橋中学校を卒業後、東京都立九段高等学校に進学しましたが、先生を殴ったことが原因で中退しました。その後、テキヤに出入りしたり、電気店や喫茶店で働いたり、雀荘を経営したり、元外務大臣の鳩山威一郎の付き人を務めたりするなど、様々な職を経験しました。

家族は仲が良かったものの、弟が起こした火事が原因で一家離散してしまいます。当時、28歳だった内田は、障害を持つ弟の生活を支える必要がありました。困り果てていた時に、安井謙（後の参議院議長）と東京都の福祉制度に出会い、これが政治家を志すきっかけとなりました。

千代田区議会議員

1975年、内田は千代田区議会議員に初当選し、その後4期務めました。その間、千代田区議会議長を2度（1984年-1985年、1988年）務めました。地元では、同級生たちを集めて「十二日会」という支援組織を作り、区議会で多数派を形成しました。

東京都議会議員

1989年、内田は木村茂都議の千代田区長選出馬に伴う補欠選挙で、その後継者として東京都議会議員に初当選しました。以後、6期連続で都議会議員を務め、都議会自民党政調会長（1996年-1997年）、同幹事長（1998年-1999年）、第39代東京都議会議長（2003年-2005年）などを歴任しました。2005年からは自民党東京都連幹事長に就任しました。

2009年の都議選で落選しましたが、自民党東京都連幹事長には留任しました。2013年の都議選で再当選を果たしました。2016年には、都知事選で自民党が推薦した候補が敗北した責任を取り、自民党東京都連幹事長を辞任しました。2017年には、都議選に出馬せず、政界を引退することを表明しました。

引退後

2017年12月9日、自民党東京都連最高顧問に就任しました。2018年には、旭日中綬章を受章しました。しかし、2021年の千代田区長選で、自民党が推薦した候補が都民ファーストの会候補に敗れたことなどから、2021年3月31日付で自民党東京都連最高顧問を辞任しました。

2022年12月21日、老衰のため東京都内の病院で亡くなりました。

人物像

内田は、高校中退後、様々な職を転々とし、その頃の様子は「フーテンの寅のようだった」と評されることもありました。しかし、人柄は気さくで腰が低く、多くの人に慕われていました。一方で、都議会議員としては、都政に大きな影響力を持っており、「都議会のドン」とも呼ばれていました。特に自民党東京都連幹事長時代は、都知事選や都議選の候補者公認を事実上握り、都政を動かしていたと言われています。

都議会のドン

内田は、都庁幹部が重要な条例や新規案件を事前に報告するなど、都政の中枢に深く関わっていました。政治評論家の田崎史郎は、内田を「都議会のドン」と評しています。元都知事の猪瀬直樹は、内田が「国会議員より大きな発言権を持つ」と指摘し、都議会で自殺者が出た背景にも、内田の影響力があったと述べています。

名門校越境問題

内田は、千代田区立麹町中学校や一橋中学校への区域外就学をめぐり、他の区の生徒を大量に紹介し、その見返りに親族から現金を受け取っていたことが明らかになっています。当時、これらの名門中学校は人気が高く、区議会議員が入学の仲介役となることが多くありましたが、内田は特に多くの生徒を紹介し、金銭を受け取っていました。

交流

内田は、秋葉原電気街の発展に貢献した山本長蔵の息子、山本修右と親交が深く、山一興産社長の柳内光子からは、浪人時代から経済的な支援を受けていました。

政策

内田は、「東京を世界一の都市にする」という目標を掲げ、以下の3つのテーマを重視していました。

安心のテーマ: 子育て支援の充実、高齢者が活き活きと暮らせる社会の実現、世界で活躍できる人材の育成
活力のテーマ: 中小企業の支援、都市整備の推進、首都圏の活性化
* 安全のテーマ: 高度防災都市の実現、生活の安全強化、環境・クリーンエネルギー都市の実現

家族・親族

内田の父親は、野菜の行商や鮮魚売りなどをしていたとされています。弟は、子供の頃に階段から転落して障害が残ったとされています。妻のセイ子は、喫茶店で働いていた際に内田と出会い結婚しました。3人の娘をもうけましたが、セイ子は2015年に亡くなりました。娘婿の直之は、一級建築士であり、元千代田区議会議員です。娘夫婦が経営する会社「トリート企画」は、不動産賃貸などのコンサルタント業務を行っています。

政治資金問題

内田の娘夫婦の会社が入居するビルには、自民党千代田区第二支部の事務所が入っており、この支部は毎月、事務所費として娘夫婦の会社に税金を原資とする政務活動費を支出しています。この行為は、政治資金規正法に詳しい専門家から、政治的、道義的に問題があると指摘されています。

まとめ

内田茂は、東京都政において大きな影響力を持っていた一方で、数々の疑惑も指摘された人物です。その波乱に満ちた生涯は、現代日本の政治の光と影を映し出す鏡と言えるでしょう。

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