内藤多仲

内藤多仲の業績と影響

内藤多仲（ないとう たちゅう、1886年6月12日 - 1970年8月25日）は、日本の著名な構造家であり建築構造技術者、建築構造学者です。「耐震構造の父」と呼ばれ、鉄塔の設計において数多くの実績を残した彼は、多くの人々に「塔博士」とも認識されています。彼の設計による作品には名古屋テレビ塔や東京タワーなどがあり、これらは日本の近代建築の象徴とも言える存在です。

経歴と学問への道

内藤は山梨県出身で、旧制甲府中学を経て第一高等学校、さらに東京帝国大学に進学しました。当初は造船学を学んでいましたが、日露戦争後の造船不況を考慮し、建築学へと専攻を変更しました。大学卒業後は早稲田大学にて教授として教える一方、1917年から1918年にかけてアメリカへの留学を経験しました。

留学中に体験した出来事からインスピレーションを受け、帰国後には耐震壁を用いた耐震構造理論を考案しました。この理論は1924年に工学博士号取得の際に表に出され、以降の建築物に多大な影響を及ぼしました。特に、耐震壁付きの鉄骨鉄筋コンクリート構造のデザインは、関東大震災を経てその有効性が証明され、多くのプロジェクトで採用されました。

受賞歴と後の活動

彼は日本建築学会や日本地震工学振興会など、様々な学会で要職を務め、戦後も名古屋テレビ塔や東京タワーなど、70基以上に及ぶ鉄骨構造の設計を手がけました。また、1960年には日本学士院会員、1964年には勲二等旭日重光章を受章するなど、技術者としての地位を確立しました。

人物と信念

内藤の趣味は能であり、自ら演じることもありました。「能を演じるのと構造設計とは同じく、やり直しがきかぬ所に無限の味わいがある」という言葉は、彼の哲学を表しています。彼は、構造設計における厳しさと美しさを同時に追求し、多くの専門家から高く評価されました。

また、著作活動も行い、耐震建築に関する理論や実務をまとめた書籍を数多く出版しています。特に「架構建築耐震構造論」という書物では、彼の理論と実践が詳細に述べられています。

死去と遺産

彼は1970年に84歳で逝去し、遺骨は多磨霊園に埋葬されました。多くの人々から尊敬された内藤多仲の功績は、今日においても多くの構造設計者たちに影響を与え続けています。「意思ある所に道あり」という言葉は、彼の人生観を示す象徴的な言葉として、彼の精神を今なお響かせています。内藤多仲の業績は、現代の日本の建築における耐震技術の礎を築くものであり、彼の名は永遠に残ることでしょう。

もう一度検索