構造家

構造家とは

構造家（こうぞうか）は、日本特有の呼称で、特に建築構造の芸術性や作品性を追求し、それに基づいて設計する構造エンジニアを指します。ここでは「構造エンジニア」が幅広い職域を持つ技術者であるのに対して、構造家はその中でも特に創作的な側面が強調されます。

歴史

この呼称は1950年から使用されており、浜口隆一と山本学治の寄稿文には、彼らが優れた技術者を「アーキテクト・エンジニア」や「構造家」と呼ぶことが示されています。また、現代の建築では、構造家は建築家と対等な関係で協働設計を行う重要な役割を果たしています。協働設計において構造家は建築家との競争や従属の立場ではなく、むしろ対等に意見やアイデアを交換する存在です。

構造デザインの実践

近年では「構造デザイン」と呼ばれるデザイン手法の実践が進んでおり、構造家はこれに従った設計を行うことが増えています。このような技術の革新は、日本国内における建築構造の発展にも大きく貢献しています。代表的な構造家の一人、菊竹清訓は「構造的建築家」とも称され、これは構造設計とデザイン意識が融合した考え方を象徴しています。

海外の事例

構造家は日本に留まらず、海外の先進的な建築構造エンジニアにもこの呼称が用いられています。著名な例として、オヴ・アラップやフライ・オットーのような作家性の強いエンジニアがいます。彼らの作品は、構造的な美しさが際立っており、単なる機能性を超えた芸術的な側面が評価されています。デビッド・ビリントンは、構造エンジニアを「Structural Artist」とし、効率性、経済性、優美さの三つを統合させた作品を「構造芸術」と定義しています。

日本の構造家の先駆者たち

日本では、真島健三郎、吉田直、内藤多仲などが、いずれも建築構造分野において重要な役割を果たした先駆者として知られています。彼らは海軍省や大学に関わりながら、卓越した業績を上げ、後の構造家の道を拓いてきました。1950年に横山不学が専業の構造設計事務所を設立したことで、本格的に構造家という職能が確立され、建築家と対等に設計を行うことができるようになりました。

現代の展開

現在、構造家という職能は多様化しており、大学教授や構造設計事務所の主宰者にとどまらず、一般企業に所属しながらも独自の作品性を追求する構造エンジニアも増えています。自然災害の多い日本では、建築構造設計の重要性が増しており、構造家による貢献が注目されています。実際、建築作品における構造家と建築家の連名での発表や受賞の例は少なくありません。

表彰制度

また、日本では構造家に対する表彰制度も存在します。過去には松井源吾賞があり、現在は日本構造デザイン賞やJSCA賞などが設けられています。国際的には、構造家の功績を認める数々のメダルも存在し、たくさんの日本の構造家がそれを受賞しています。

まとめ

構造家という職能は、日本だけでなく世界中に広がり、建築という分野でその存在感を高めてきました。彼らはただ建物を支えるだけでなく、作品の美しさや機能性を統合させ、建築芸術の新しい可能性を切り開く重要な役割を持っています。

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