内陸国

内陸国とは

内陸国とは、周囲を陸地に囲まれ、海に面していない国家のことを指します。世界には48の内陸国が存在し、それぞれ異なる歴史的背景と地理的特徴を持っています。内陸国であることは、国家の発展や国際関係において、特有の課題と機会をもたらします。

歴史

内陸国は、歴史的に防衛上の利点がありました。河川などの水系を確保することで、外部からの侵入を防ぐことができたためです。特に、河川の上流部は戦略的に重要視され、多くの都が内陸に置かれました。日本においても、古代には内陸に都が置かれることが多く、これは防衛上の観点から、海からの侵攻を防ぐ意図があったと考えられています。世界的に見ても、かつての都は、海に面した沿岸都市ではなく、河川が流れる内陸都市に置かれることが一般的でした。

しかし、大航海時代に入り、大型船舶の建造技術が発展すると、状況は一変します。海に面した国は、海上貿易を通じて経済力を増強し、植民地を拡大するようになりました。これにより、内陸国は経済発展において不利な立場に置かれることになります。中世から第一次世界大戦後にかけて、欧州各国は内陸国であっても海への出口を確保することに躍起になりました。この状況は、現在でも国際関係に大きな影響を与えています。

内陸国を巡る様々な問題

内陸国は、海へのアクセスを確保するために様々な手段を講じてきました。18世紀には、アドリア海に面するドゥブロヴニク共和国が、オスマン帝国にネウムの町を割譲しました。これは、ヴェネツィアとの紛争を避けるため、陸上の国境をなくす目的でしたが、結果的にボスニア・ヘルツェゴビナの唯一の海岸線となりました。また、コンゴ国際協会（現コンゴ民主共和国）は、ベルリン会議において、海への出口として、アンゴラを二分する細長い土地（回廊）を与えられました。

ロシアは、歴史的に不凍港の獲得に執念を燃やしました。これは、北極海に面した港が冬季に凍結してしまうため、一年中利用できる港が不可欠だったからです。第一次世界大戦後、ポーランドは海への出口としてダンツィヒ回廊を与えられました。ドナウ川は、内陸国であるオーストリアとハンガリーが安全に海へ出入りできるように、国際河川とされました。ボリビアは、太平洋戦争で海岸線を失いましたが、現在でも海軍を維持しています。

内陸国の状況は、国際関係における紛争の火種となることもあります。ボリビアガス紛争のように、ガスパイプラインのルートを巡って周辺国との間で紛争が発生することもあります。第一次世界大戦は毒ガスの開発・近代的な戦車の使用・航空機による空爆などが初めて大規模に行われた戦争であり、その後の第二次世界大戦でも制空権の確保が被害の拡大と戦況を左右したこともあり、海岸線の確保は以前よりは重視されなくなっています。

内陸国と国際法

内陸国の通過貿易に関する条約は、内陸国が関税なしに他国を通過して海に連絡する権利を定めた初めての多国間条約です。国連海洋法条約でも、内陸国の海への出入りの権利及び通過自由が認められています。国際連合には、発展途上の内陸国を援助するための行動プログラムがあります。

内陸国の中には、カスピ海やアラル海などの内陸の海に面している国もありますが、これらの海は外洋とは接続していないため、これらの国も内陸国とみなされます。内陸国には、海に接続するための回廊と呼ばれる陸地が与えられることがありますが、この回廊が他国の領土を分断し、飛地を生み出すこともあります。

二重内陸国と準内陸国

二重内陸国とは、国境を接する全ての国が内陸国である内陸国のことです。現在、世界にはリヒテンシュタインとウズベキスタンの2か国しか存在しません。二重内陸国は、海に出るために少なくとも2つの国境を越えなければなりません。

準内陸国とは、国土の面積に対して海岸線が非常に短い国（陸上国境線と海岸線の合計のうち海岸線の占める割合が5%未満の国）のことです。コンゴ民主共和国、ボスニア・ヘルツェゴビナ、イラクなどがこれに該当します。

まとめ

内陸国は、その地理的条件から、歴史的に様々な困難に直面してきました。しかし、国際的な協力や技術の進歩により、内陸国は新たな発展の機会を模索しています。内陸国が抱える課題は、国際社会全体で取り組むべき課題でもあります。内陸国と海岸線を巡る問題は、複雑で多岐にわたりますが、歴史、地理、国際法といった様々な視点から考察することで、より深く理解することができます。

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