円切上げ

円切上げ（えんきりあげ）とは

円切上げとは、為替相場の混乱を解消するために行われた1971年の為替レート変更を指します。この施策は、ニクソン・ショックに始まる経済の不安定を受けて、スミソニアン協定によって合意され、1971年12月19日から実施されました。

経緯

第二次世界大戦後、世界はブレトン・ウッズ協定に基づく固定為替相場制のもとで運営され、アメリカのドルが金と交換可能な基軸通貨とされていました。しかし、1960年代の終わり頃、アメリカの国際収支は急激な赤字を抱えるようになり、これがドル危機を引き起こしました。

1971年8月15日、アメリカのリチャード・ニクソン大統領は、ドルと金の交換を停止することと、全ての輸入に対して10%の課徴金を導入するという衝撃的な発表を行いました。このいわゆるドル・ショックは、対米貿易で黒字を出している日本や西ドイツに対し、対ドル為替レートの引き上げを求めるものでした。

その後、西欧各国は外為市場を閉鎖し、8月23日から変動為替相場制に移行しました。一方で、日本はドルによる国際決済に依存し、長きにわたって維持されていた1ドル=360円の固定相場を続ける姿勢を崩しませんでした。その結果、日本国外からのドル売りが集中し、東京外国為替市場は混乱を極め、日本銀行との間での激しいやり取りが繰り広げられました。しかし、持続的なドル買いを続けることが困難になり、日本は8月28日に遂に1ドル=360円のレートを放棄し、変動相場制へと移行しました。

スミソニアン協定

1971年12月17日から18日にかけて、アメリカ・ワシントンのスミソニアン博物館で開催された会議では、アメリカや日本を含む10カ国の財務大臣が集まりました。この結果、円は対ドルで16.88%の上昇が合意され、1ドル=308円の固定為替相場を再開することになりました。また、ドルは金に対して7.89%切り下げられました。これがスミソニアン協定と呼ばれるもので、円の切上げ率はアメリカ以外の国々の通貨の中でも最も大きなものでした。

しかし、この協定によって形成されたスミソニアン体制は、アメリカの国際収支の悪化を抑えることができず、1973年4月18日にはアメリカがドルの10%切下げを発表する事態となります。これを受けて、日本も翌19日に再び変動為替相場制への移行を決定しました。この出来事をきっかけに、他の西欧諸国も同様の措置を取るようになり、固定相場制に復帰することは困難となりました。

その後、円は相対的に高く評価される流れとなり、2011年7月には1ドル=80円を超え、80円台後半で推移しました。2016年10月には一時的に円安傾向が見られ、1ドル=100円台前半で推移しました。円切上げは、日本経済と国際金融市場に多大な影響を与えた歴史的な出来事として、今なお語り継がれています。

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