円唇前舌広母音

円唇前舌広母音について

円唇前舌広母音（えんしん・まえじた・ひろぼいん）は、音声学における母音の種類の一つであり、国際音声記号では[ɶ]と表記されます。この母音は、基本母音の12番目に位置づけられており、開前舌円唇母音（かい・まえじた・えんしんぼいん）とも呼ばれることがあります。

発音の特徴

円唇前舌広母音は、非円唇前舌広母音[a]を発音する際の舌の位置を保持したまま、唇を丸めることで作り出されます。具体的には、[a]を発音する時のように口を大きく開け、舌を前方かつ下方に位置させますが、同時に唇を丸めて発音します。この唇の丸めが、この母音の音色を特徴づける重要な要素となります。

国際音声記号

国際音声記号（IPA）において、円唇前舌広母音は[ɶ]と表記されます。この記号は1979年に正式に採用されました。それ以前は、この音を音素として持つ言語が確認されていなかったため、国際音声記号にはこの音を表すための記号が存在しませんでした。ダニエル・ジョーンズのような音声学の権威も、この音を基本母音には含めていませんでした。

言語例

円唇前舌広母音[ɶ]を持つ言語の例として、オーストリアドイツ語が挙げられます。例えば、オーストリアドイツ語の単語「Seil」（縄）は、[sɶː]と発音されます。この発音では、[ɶ]の音が明確に現れます。

補足

円唇前舌広母音は、他の母音と比べると、それほど多くの言語で使用されているわけではありません。しかし、一部の言語においては、重要な音素として機能しています。音声学の研究が進むにつれて、この母音の重要性は認識されるようになりました。このように、国際音声記号は、言語の多様性を記述するために、常に更新され、拡張されています。

まとめ

円唇前舌広母音[ɶ]は、[a]の舌の形で唇を丸めることで発音される母音です。この音は、国際音声記号において[ɶ]として表され、オーストリアドイツ語のような一部の言語において、明確に区別される音素として存在します。円唇前舌広母音の理解は、音声学において、言語の多様性を理解する上で重要な要素の一つです。

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