円測

円測（えんじき、원측、613年 - 696年）は、新羅出身の学僧であり、法相宗の発展に大きく貢献しました。新羅王の孫とも伝えられています。彼は唐に渡り、法常・僧弁に唯識を学びました。645年に玄奘が唐に帰国すると、その門下として経典の翻訳や注釈に携わり、長安の西明寺に住しました。このことから、彼は西明円測と称され、彼の門下は西明寺派と呼ばれました。

円測の学説は、玄奘の弟子である窺基の門下、すなわち慈恩寺派と対立したとされています。『宋高僧伝』によれば、円測は慈恩寺派から破門、排斥、誹謗を受けたとのことです。また、玄奘が窺基に『成唯識論』を講じた際、円測は門番に賄賂を渡して講義を盗聴したという逸話も伝えられています。この逸話は、円測が伝統的な唯識学とは異なる独自の立場を取っていたことを示すものとして、古くから知られています。

著作

円測は多くの著作を残しており、その中でも特に重要なものは以下の通りです。

『解深密経疏』10巻（ただし、第10巻は現存していません）
『仁王経疏』6巻
『般若心経賛』1巻

伝記資料

円測に関する伝記資料は、以下のものが現存しています。

崔致遠『故翻経証義大徳円測和尚諱日文』（858年‐?）
賛寧『宋高僧伝』巻四 唐京師西明寺圓測傳 薄塵靈辯（919年‐1001年）
宋復『大周西明寺故大德圓測法師佛舍利塔銘並序』（?‐1115年‐?）
一然『三国遺事』巻十二（1206‐1289年）
釈曇噩『六学僧伝』巻二十三（1285‐1373年）

これらの資料を通じて、円測の生涯や学説、そして彼が仏教界に与えた影響を知ることができます。円測は、玄奘三蔵の正統な後継者の一人として、中国仏教、ひいては東アジア仏教の発展に大きく貢献した人物として評価されています。彼の学説は、既存の学説に捉われず、独自の解釈を加えることで、唯識思想に新たな視点をもたらしました。そのため、彼の学説は当時としては異端と見なされることもありましたが、後世の仏教研究に大きな影響を与えたことは間違いありません。

円測の研究は、現代においても重要な意味を持っています。彼の著作や伝記資料を読み解くことで、当時の仏教思想や文化、そして社会情勢をより深く理解することができます。また、彼の独自の視点や解釈は、現代の私たちが仏教を学ぶ上でも、新たな発見や気づきを与えてくれるでしょう。

もう一度検索