坪井正五郎

坪井正五郎の生涯と業績

坪井正五郎（つぼい しょうごろう）は、1863年2月22日に江戸の両国矢之倉（現・東日本橋）で生まれました。彼は、蘭方医である坪井信道の孫であり、父は幕府奥医師である坪井信良です。正五郎は、1877年に大学予備門に入学し、1886年に帝国大学理科大学動物学科を卒業しました。この卒業後、彼は人類学への興味を深め、同年に東京人類学会を設立しました。

その後、正五郎は帝国大学大学院に進み、人類学を専攻します。1888年には帝国大学理科大学の助手となり、さらなる研究を続けました。1891年にはイギリスに留学し、3年間の学びを経て1892年に帰国。帝国大学理科大学の教授に就任しました。彼の学生には、後に著名な人類学者となる鳥居龍蔵が含まれています。

正五郎は、アイヌ民族の伝説に登場するコロボックルに関する研究でも知られ、実在説を支持し、日本石器時代人はコロボックルであると主張しました。この主張は当時の学界において注目され、多くの議論を呼びました。彼はまた、1903年に開催された第5回内国勧業博覧会において学術人類館に協力し、学術の普及にも寄与しました。

学問と著作

坪井正五郎は、著述家としても多くの業績を残しました。代表作としては、『工商技芸看板考』や『日本旧土人コロボックル石斧ヲ研キ獣肉ヲ煮ル図』などがあり、これらは彼の独創的な視点が反映されています。また、『人類談』や『人類学講義』なども彼の名著であり、後の人類学に多大な影響を与えました。彼は、福音書のような形で人類学を普及させ、一般の人々にも理解しやすい形で人類学の知識を伝えようと努めました。

家族と晩年

坪井は、1892年に蘭学者の箕作秋坪の娘・直子と結婚しました。夫妻は二男二女をもうけ、長男の誠太郎は地質学・鉱物学の研究者として知られています。また、次男の忠二は地球物理学者として活躍しました。

正五郎は、1913年にロシアのサンクトペテルブルクで万国学士院大会に出席中に急性穿孔性腹膜炎で急逝しました。墓所は染井霊園にあります。彼の死後も、その業績は高く評価され続け、坪井正五郎は日本の人類学研究の先駆者として記憶されています。

影響と評価

坪井正五郎は、日本の人類学の基礎を築いた重要な人物であり、彼の働きかけによって人類学や考古学が広まりました。また、彼は柳田国男や南方熊楠とも深く関わり、学問の発展に貢献しました。さらに、彼は人類学的視点を玩具の開発にも応用するなど、多才な業績を残しました。

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