円通

円通の生涯と業績

円通（えんつう、1754年 - 1834年）は、江戸時代後期に活躍した天台宗の僧侶であり、仏教や天文学に大きな影響を与えた人物です。彼は因幡国に生まれ、初めは日蓮宗の僧でしたが、後に天台宗に改宗し、比叡山で慧澄や豪潮の教えを受けました。彼の多才な才能は、特に西洋天文学への関心に根ざしています。

初期の疑問と天文学の探求

円通は15歳のとき、游子六によるティコ・ブラーエの天文学に関する入門書『天経或問』を読んで、仏暦との矛盾に疑問を抱くようになります。当時は、儒学者や国学者たちから仏教批判が高まり、円通はこれが仏教の衰退につながると考えました。彼はその解決策としてインドの暦学を学び、土御門家にも教えを受けます。

この研究により、円通は1810年（文化7年）に『仏国暦象編』を著しました。この著作は、須弥山宇宙論に基づいたもので、仏教の宇宙観と暦法の重要性を訴える内容でした。しかし、彼の主張に対しては、伊能忠敬や武田真元などの著名な同時代の学者たちから反論が寄せられました。

数学と計算の革新

円通はまた、仏暦家として数理的なアプローチも追求しました。100進法の三角関数表が必要となり、彼は茶室実寿に指示を出して60進法を100進法に変換した『新編百分法』を編纂させました。この新しい方法論は、天文・暦学の計算に大きな役立ちました。

仏教宇宙観の再現

円通は、仏教の宇宙観を視覚的に表現するために『須彌山儀銘並序』や『縮象儀説』といった図を作成しました。彼の弟子たちによって、これらのアイデアは実際に動くからくり模型として再現されました。これらの模型は、東芝の創業者田中久重に依頼され、より広く知られることとなります。円通の梵暦復活の運動は全国的に展開し、多くの人々に影響を与えました。

晩年と弟子たち

円通は最初、山城国智積院に住んでいましたが、その後、江戸の増上寺恵照院に移ります。彼の門下には環中、信暁、霊游などの著名な弟子がいました。環中は、特に佐田介石という弟子を持つことで知られています。円通の影響は、彼の死後も広がり続け、彼が推進した天文学や暦法の研究は、後の世においても重要な役割を果たしました。彼の存在は、仏教と科学の交差点における重要な証として、今も語り継がれています。

もう一度検索