冒険者たち (1975年の映画)

幻の映画『冒険者たち』（1975年）

『冒険者たち』は、1975年4月14日に公開された日本映画。人気絶頂だった、あのねのねが主演を務め、臼井高瀨が監督した作品です。同名のフランス・イタリア合作映画とは全く異なるオリジナルストーリーであり、1970年に発生した瀬戸内シージャック事件をモチーフにしています。

あらすじ

舞台は岡山県倉敷市。少年院を出所したばかりのケン（清水国明）と、実家の映画館で自堕落な日々を送るヒデ（原田伸郎）は幼馴染。ひょんなことから、高校生もぐり（小見山靖弘）と東京から来た女子学生ユミ（黒沢のり子）と出会い、四人は幕末の志士が隠したという宝を求めて、瀬戸内海の無人島へと向かいます。

県外での泥棒で資金を稼ぎながら、島での奇妙な共同生活を送る四人。しかし、ユミが暴行される事件や、ケンたちの復讐劇が起こり、次第に事態は深刻化。宝は見つからず、警察の捜査も迫り、四人は最後の手段として観光船を乗っ取ってしまう。

製作の背景

監督の臼井高瀨は、文芸評論家の臼井吉見を父に持ち、新藤兼人監督の元で助監督として経験を積みました。瀬戸内シージャック事件当時、『裸の十九才』の助監督を務めており、事件の生々しい迫力に衝撃を受けたことが、本作の企画の原点となりました。1974年に制作会社「冒険社」を設立し、本作を自主制作。

キャスティングと撮影

あのねのねは、元々アフリカ旅行を予定していましたが、「瀬戸内海で宝探し」という企画に惹かれ、出演を快諾。ノーギャラでの参加となりました。撮影は1974年8月に瀬戸内海近辺で行われ、過酷な環境下でのロケとなりました。清水国明が撮影中に怪我をするアクシデントもあったようです。

幻の作品

当初、全国上映ツアーを予定していましたが、劇場公開はされず、1975年4月に東京の東條會館ホールで短期間上映されたのみ。以降、一度も上映されておらず、ビデオやDVDも発売されていません。そのため、本作は「幻の映画」として語り継がれています。

スタッフ

監督：臼井高瀨
脚本：田辺泰志
企画：磯田啓二
製作：萩原正明
音楽：J・A・シーザー

キャスト

ケン：清水国明
ヒデ：原田伸郎
もぐり：小見山靖弘
* ユミ：黒沢のり子

『冒険者たち』は、時代に取り残された若者たちの焦燥感や、社会への反抗心を描いた作品であり、あのねのねのコミカルな演技と、瀬戸内海の美しい風景が印象的な作品です。現在では鑑賞が難しい作品ですが、その存在は日本の映画史に刻まれています。

もう一度検索