裸の十九才

『裸の十九才』は、1970年に公開された新藤兼人監督による日本映画であり、近代映画協会創立20周年記念作品として制作されました。この作品は、1968年に発生した永山則夫連続射殺事件を題材としており、社会に大きな衝撃を与えた事件を背景に、人間の内面を描き出しています。主演には当時新人の原田大二郎が抜擢され、その迫真の演技が注目を集めました。

監督は新藤兼人、脚本は関功と松田昭三が担当しました。製作は絲屋寿雄と能登節雄が務め、撮影は黒田清己、照明は岡本健一、音楽は林光、録音は大橋鉄矢が担当しました。豪華なスタッフ陣が、この作品を支えています。

主要なキャストとして、山田タケ役を乙羽信子、山田道夫役を原田大二郎、山田半次郎役を草野大悟が演じています。その他、佐藤慶、渡辺文雄、殿山泰司、河原崎長一郎、観世栄夫、小松方正、戸浦六宏、太地喜和子、初音礼子、平井岐代子、初井言榮、佐々木すみ江、高杉早苗、浜田寅彦、鳥居恵子、松本染升、織本順吉、松下達夫、戸田春子、清水綋治、江角英明、大木正司、村野武範、そしてナレーターとして宇野重吉が出演しています。多彩な俳優陣が、それぞれの役を鮮やかに演じました。

特に注目すべきは、主演の原田大二郎の起用です。新藤兼人監督は、永山則夫を演じるにふさわしい新人俳優を探すため、400人以上と面会しましたが、なかなかイメージに合う人物を見つけることができませんでした。そんな中、『エロス+虐殺』の予告編を見た助監督が原田大二郎を推薦しました。面接で原田に会った新藤は、その鋭い視線に驚き、「世の中にこんなに人を鋭く見れる人がいるのか」と感じたといいます。原田も新藤の目力に圧倒されながらも、負けじと睨み返したそうです。この緊張感のあるやり取りの後、原田は台本を渡され、その内容に深く感動し号泣したそうです。しかし、「この役は僕には無理だろう」と思っていたところ、翌日、新藤から出演依頼の連絡があり、原田は出演を決意しました。撮影中は、「もうこれで死んでもいい」という覚悟で役を演じ切ったそうです。

原田は、この大役を演じきったことで大きな達成感を得ましたが、その反動も大きく、その後は現代的な二枚目役のオファーが続くようになり、役者としての成長を怠る時期が長く続いたと述懐しています。この作品は、原田にとって役者人生における大きな転換点となったと言えるでしょう。

『裸の十九才』は、1971年の第7回モスクワ国際映画祭で金賞（グランプリ）を受賞しており、その芸術性の高さが国際的にも評価されています。全編白黒で撮影されており、その映像表現もまた、作品の雰囲気を際立たせています。

この映画は、永山則夫事件という重いテーマを扱いながらも、人間の複雑な内面や社会の闇を描き出し、観る者に深い問いを投げかけます。事件の真相を追求するだけでなく、人間の存在意義や社会の矛盾にまで踏み込んだ作品として、今もなお多くの人々に語り継がれています。

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