冠動脈大動脈バイパス移植術

冠動脈バイパス移植術について

冠動脈バイパス移植術（CABG）は、心臓の虚血状態を改善するために行われる手術です。虚血性心疾患は、心筋へ酸素を供給する冠動脈の狭窄や閉塞によって生じ、血流不足が心筋の機能に影響を及ぼします。この手術では、狭窄した冠動脈の遠位部分に大動脈や内胸動脈から血管を接続し、血流を回復させることを目的としています。

手術の歴史

この手術の先駆けとなったのは、1967年にアメリカ・クリーブランドで行われたCABGで、アルゼンチン人の外科医ルネ・ファバローロにより成功を収めました。この成功に続き、CABGは現代的な心臓手術の一つとして広く行われるようになりました。

手術のプロセス

CABGは、通常全身麻酔下で実施されます。手術の流れは次のようになります：

1. 開胸: 胸骨を割るために正中切開を行い、心膜を切開して心臓を露出させます。
2. バイパス用グラフトの採取: 血管（グラフト）を採取する過程が行われます。
3. 吻合: グラフトは冠動脈と大動脈にそれぞれ縫合され、血流が確保されます。
4. 血流確認: グラフトへの血流が正しく行われているかを確認します。
5. 閉胸と閉創: 止血後、ドレーン挿入やペースメーカーリードの装着を行い、最終的に胸を閉じ、創部を処理します。

術式の種類

CABGにはいくつかの方法があります。主に次の2つの方法があります：

人工心肺装置を使用する方法

心臓を停止させることができ、血流を体外循環させる旧来の方法です。この方法では、心臓が止まっているため、縫合や操作が容易になります。

人工心肺装置を使用しない方法（オフポンプCABG）

近年、心臓の動きを制御するスタビライザーの登場により、通常動いている心臓にグラフトを接続することが可能になりました。この方法は、人工心肺を使用しないため、術後のリスクが少ないとされています。

OPCABのメリットとデメリット

OPCABの利点は、人工心肺によるリスクを避けられる点や、動脈硬化が進行した場合でも手術が可能な点です。しかし、心臓の動きを抑制すると、心機能に負担をかけたり、血流が一時的に減少するため、不整脈のリスクがあったり、術者の技術が求められる点に注意が必要です。

今後の研究と課題

CABGに関連するさまざまなテーマでは、いまだに意見が分かれる部分があります。特に、OPCABの効果や安全性についてはさらなる研究が必要とされており、標準的な治療法の確立には時間がかかる見込みです。遷延する結果が出ている一方で、人工心肺を使用した他の術式が若干有利であるとの報告もあります。

グラフトとして用いる血管

CABGにおいて使用されるグラフトは、静脈と動脈のいずれかに分けられます。静脈グラフトは古くから定評がありますが、長期的な開存率は動脈グラフトより低いとされます。動脈グラフトでは、内胸動脈や橈骨動脈などが利用され、血流の改善に寄与しています。

関連項目

• - 静脈血栓塞栓症

CABGは虚血性心疾患の治療における重要な手段であり、今後の医学の進展に伴って、ますます安全で効果的な治療法が模索されることでしょう。

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