冨山保

冨山保 (とみやま たもつ) - 電気化学の巨星

冨山保は1888年4月28日に茨城県水戸市で生まれ、日本の工学分野に多大な貢献をした人物です。彼は電気化学を専門とし、その研究と教育活動を通じて日本の工業発展に寄与しました。1952年には横浜国立大学の初代学長としての役割も担いました。彼の教育者としての生涯や業績を振り返ることは、今なお多くの人々にとって価値ある学びとなります。

学歴と経歴

冨山は水戸市橦木町にて士族の家系に生まれ、1909年に東京高等工業学校の電気科を卒業しました。続いて、1913年には東北帝国大学の理科大学で特待生として選ばれ、翌年に化学科を卒業しました。その後、明治専門学校（現在の九州工業大学）で教授として教鞭を執り、さらに横浜舎密研究所主任などの職を経て、1926年に東洋窒素工業の取締役に就任しました。

彼の研究は次第に評価され、1928年には東北帝国大学で理学博士の学位を取得し、その後、松尾鉱業の顧問を務めることになります。1935年には横浜高等工業学校の校長に就任し、教育機関の運営においても力を入れました。しかし、1948年に学校の施設が火災に見舞われ、官吏懲戒令により譴責処分を受けました。

横浜国立大学の設立と学長職

横浜国立大学の設立に関しては、彼の強い意志が見え隠れします。大学設置委員会の一員として、彼は当初「横浜大学」の名称で設立を試みましたが、審議の過程で名称を巡る問題に直面します。神奈川新聞などのメディアからは「湘南大学」の提案があり、教育委員会からも異論が出ましたが、彼は「国立横浜大学と市立横浜大学が並んでも支障はない」と反論し、粘り強く説得を試みました。その結果、1949年に横浜国立大学が設立され、初代学長に就任する運びとなりました。

教育活動とその後の業績

冨山は新制横浜国立大学において、特に工学部の教育体制の充実を図り、大学院工学研究科の設立を志向しました。しかし、官庁による差別的な措置が影響し、任期の途中で退官を余儀なくされました。その後、他の大学と連携し、ようやく1963年には大学院工学研究科の設置が認められる結果を得ました。

退官後も冨山は精力的に活動を続け、1952年からは日本カーバイド工業の取締役に就任、さらに常務取締役や専務取締役として経営に携わりました。また、1958年には横浜国立大学に化学研究費として寄付を行い、紺綬褒章を受章しました。加えて、彼は1962年に発明賞を受賞し、1967年には勲二等瑞宝章を受けるなど多くの栄誉を得ています。

最後の業績と功績

冨山は1972年に亡くなるまで、日本の工学界に多大な影響を与え続けました。彼が受けた従三位の追贈や正三位への昇叙など、その生涯における業績は歴史に刻まれています。また、1949年には彼の著書『電気化学工業』が出版されており、これは彼の学問的な成果をまとめた重要な作品となっています。冨山保の功績は、今日も多くの人々に引き継がれており、今後の研究や教育にも大いに影響を与えることが期待されます。

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