冷泉範遠

冷泉範遠（れいぜい のりとお）は、戦国時代の公卿であり、『知譜拙記』によれば官位は正五位下・左馬頭であったとされています。

大内義隆の装束の師

範遠は、周防・長門を拠点とした戦国大名、大内義隆の装束の師を務めていました。これは、彼が公家社会において一定の地位と教養を有していたことを示唆しています。大内氏は、文化的な側面にも力を入れており、京の文化人を招聘することで、その領国を文化的に豊かなものにしようとしました。範遠もそうした文化人の一人として、大内氏に仕えたと考えられます。

大寧寺の変との関わり

萩原大輔は、大寧寺の変において殺害された「一忍軒」を範遠に比定する説を提唱しています。大寧寺の変は、天文20年（1551年）に大内氏の重臣である陶隆房（後の陶晴賢）が主君である大内義隆を討った事件であり、大内氏の勢力衰退のきっかけとなりました。

もし、この説が正しければ、範遠は大寧寺の変において、陶隆房によって殺害されたことになります。萩原大輔は、大寧寺の変において柳原資定、清原業賢、持明院基規、法性寺親世らが生存しており、変の翌年には飛鳥井雅綱・雅教親子が山口に訪れていることから、陶隆房ら従来の大内氏被官には明確に目標とする公家がおり、それが大内氏家中にて発言権を持っていた小槻伊治と一忍軒（範遠か）であったと主張しています。つまり、陶隆房らは、大内氏の文化政策に影響力を持つ公家勢力を排除することで、自らの勢力を拡大しようとした可能性があります。

死没時期に関する異説

ただし、『知譜拙記』では、範遠は大寧寺の変から1ヶ月ほど経った天文20年9月28日（1551年10月27日）に死去したとされています。もしこの記述が正しければ、範遠は大寧寺の変で殺害されたのではなく、病死などによって亡くなったことになります。この点については、今後の研究によって明らかになることが期待されます。

このように、冷泉範遠は戦国時代の公卿として、大内氏との関わりや大寧寺の変との関係において、様々な議論がある人物です。彼の生涯を辿ることは、当時の公家社会や戦国大名の文化政策、そして大寧寺の変という歴史的事件を理解する上で重要な意味を持つと言えるでしょう。

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