冷飯とおさんとちゃん

映画『冷飯とおさんとちゃん』

『冷飯とおさんとちゃん』は、1965年に公開された日本の映画で、中村錦之助（萬屋錦之介）が主演を務め、田坂具隆が監督を担当しました。この作品は、山本周五郎の三つの短編小説を基にしたオムニバス映画です。運命的な出会い、結婚、家庭の営みを通じて、男性の視点から女性との関係が描かれています。

概要とストーリー

本作は、山本周五郎の著作『ひやめし物語』『おさん』『ちゃん』を取り入れた構成になっており、各短編は独立した物語を持っています。それぞれのエピソードでは、江戸時代の庶民の生活が静かに描かれており、主題は男と女との間の対立や絆です。テクニカルなチャンバラや派手な戦闘シーンがない中で、感情に訴える深い物語が展開されます。

第1話の『冷飯』では、恋愛の甘酸っぱさが語られ、主人公が愛する女性と素直になれずに悩む姿が描かれています。第2話の『おさん』では、結婚の営みに焦点を当て、夫婦の関係がどのように育まれていくのかを探ります。第3話の『ちゃん』では、家庭生活と男の人生について考察され、各エピソードが全体として一つのテーマを読み取らせます。

中村錦之助は、これら三つの物語を通じて異なるキャラクターを演じ、その演技力を存分に発揮しています。共演には、木暮実千代、三田佳子、森光子などの豪華な女優陣が揃い、彼らとの絡みも見どころです。

スタッフとキャスティング

製作は大川博が担当し、企画は岡田茂、小川三喜雄、三村敬三が行いました。脚本は鈴木尚之が手掛け、監督の田坂具隆とともに作品の魅力を引き出しました。中村錦之助が主演ということで、彼のキャリアも注目される作品となりましたが、大作一本立てとしてさらに期待されていたといいます。

キャストには、恵まれた女性陣も目を引きます。特に、サブキャラクターたちも実力派揃いで、中村と女優陣の演技の絡みが見どころとなっています。

製作背景と公開

本作の製作は1964年の春に始まり、興行面での挑戦も伴いました。映画の撮影は1965年3月に終了し、4月には初号試写が行われました。しかし、公に公開されると、興行成績は期待外れとなり、短期間での打ち切りを余儀なくされるという結果に。これにより、映画自体の評価と興行成績には大きな乖離が生じました。

作品の評価と影響

映画評論家からは高評価を受けたにもかかわらず、興行的には厳しい現実が待ち受けていました。オムニバス映画は興行的に難しいとのジンクスがあったことも影響し、本作もその例に漏れませんでした。それでも、作品内では人間模様や社会情勢が反映されており、当時の時代背景の中でどのように映画が作られたのかを考える一つの材料となっています。

本作は、中村錦之助が興行的に厳しいトンネルを経験した節目となり、さらには東映の時代劇の終わりを象徴する作品としても思い出されています。今後も日本映画の歴史において、興行面や作品内容共に重要な位置を占めることでしょう。

このように、『冷飯とおさんとちゃん』は、当時の日本映画を代表する作品として、特に中村錦之助の演技力や時代背景を感じる貴重な映画として記憶されています。

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