凌振

凌 振（りょう しん、Ling Zhen）

凌振は、中国古典小説の一つ『水滸伝』に登場する重要なキャラクターであり、梁山泊の108人の好漢の中で第52位に位置付けられています。彼はその名を轟天雷（ごうてんらい）と呼ばれ、主に大砲を使った戦術で知られています。凌振の大砲隊は、彼が自ら発明した子母砲や連珠砲など、驚異的な破壊力を誇る兵器を駆使していて、これが彼の名声を確立する要因の一つです。

生涯の初期

凌振はもともと東京（現在の開封）で甲丈庫の副使として働いていましたが、梁山泊討伐軍の総大将である呼延灼から援軍としての要請を受けるに至りました。しかし、彼の天賦の才を恐れた梁山泊軍は、彼を水上に誘引し、迅速に捕らえることに成功しました。この時、凌振は梁山泊軍の副将・宋江に説得され、彼らに寝返る決意を固めます。彼は自身の家族を東京から呼び寄せ、火薬を調達することで梁山泊軍の砲兵隊を組織し、再び呼延灼軍への攻撃を試みるという逆転劇が展開されました。

戦場での活躍

その後、凌振は梁山泊軍の外征において、常に彼の率いる砲兵隊が同行することが常となります。青州攻め、北京攻め、東昌府攻めなど、多くの戦いで彼はその存在感を示し、卓越した指揮官としての地位を確立しました。また、彼は108人の好漢が揃った際には第52位にランキングされ、さらに大砲製造の責任者としても名を馳せました。

梁山泊軍が朝廷から招安されると、凌振は遼国征伐や方臘征伐において特に砲兵の将として大きな役割を果たします。彼の使用する大砲は戦場で非常に効果的であり、戦術における面でも重要な要素となりました。ただし、彼の場合、大砲の特異性に伴って自身の感情や個性があまり表に出ないのが特徴とも言えます。

凱旋と後半生

方臘征伐が終息し、東京に凱旋した凌振は、梁山泊軍の解散後には武奕郎の称号を得て、火薬局御営の任用を受けるなど安定した後半生を送ります。多くの仲間が悲劇的な運命にある中で、彼は比較的無難な道を歩んだと言えるでしょう。

歴史的背景

面白いことに、役割を果たした大砲が実際に使われるようになったのは、水滸伝の舞台となる北宋末よりもずっと後の時代です。南宋末期には、モンゴル軍が大砲に類似した武器を使って野戦や攻城戦を行う記録が残っています。また、作者である施耐庵や羅貫中が生きていた明代では、すでに大砲が戦場に登場していました。これは彼のようなキャラクターが現実に根付いた要素を持つことに一役買っています。

凌振の独自性

梁山泊軍の中で、騎馬隊や歩兵隊、水軍の将校が多数存在する一方で、砲兵の将は凌振ただ一人という状況は、彼の置かれた特殊な役割を示しています。砲兵は彼の個人技によるものであり、後の世で発展する組織的な砲兵隊とはその意味合いが異なります。この点において、凌振の戦術は公孫勝の魔術とは異ならない、一種の独自性を体現しています。

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