甲乙人

甲乙人（こうおつにん）についての考察

甲乙人という言葉は、中世日本において用いられた表現で、年齢や身分にかかわらずすべての人を指すものでした。この言葉の使われ方は時代とともに変遷していき、特に資格や権利を持たない一般庶民を特定するための表現に進化しました。

甲乙の意味とその使用法

「甲」や「乙」などの表現は、現代的な言葉で言う「A」や「B」に相当します。つまり、特定の人を呼ぶ際の代名詞として用いられていたのです。中世の日本では、「甲人」「乙人」「丙人」といった用語が不特定の人や無関係な第三者を表すために使われていました。このようにして、特定の固有名詞を使用せず、柔軟にコミュニケーションが行われていたのです。

社会的背景と権利の概念

甲乙人という呼称は、次第に権利や能力を持たない人々を指すようになりました。特に、所領・所職を知行する際に、正当な資格や能力がない者として排除される存在を指します。例えば、将軍から与えられた御家人領を、主従関係を担えない者が知行することを避けるために「非器の甲乙人」として非難されました。このように、甲乙人は権利の適正な行使に関する社会的規範の重要性を示す存在となったのです。

一般庶民と甲乙人の関係

特に「凡下百姓」や「雑人」と称される一般庶民は、無条件で所領・所職を知行する资格を持たない存在として「非器の甲乙人」の典型とされました。鎌倉時代中期には、「甲乙人」という言葉が一般庶民を指す言葉として使われるようになりました。これにより、甲乙人は庶民の総称のような役割を果たすこととなり、社会における階層や権利の重要性を再認識させる契機となりました。

支配階級との緊張関係

この表現の普及は、庶民が商業資本を基にして所領や職を手に入れようとする動きに対する支配階級の警戒感を反映していました。武士や侍にとって「甲乙人」と呼ばれることは、自身の身分を否定され、庶民に見なされる侮辱的な行為とされました。このことは、甲乙人という言葉に対する感情的な抵抗や社会的な緊張を生む要因となりました。

まとめ

甲乙人の概念は単に言葉の使い方の変遷にとどまらず、日本の中世社会における権利や身分を巡る複雑な関係性を明らかにします。このような歴史的背景を理解することで、当時の社会構造に対する洞察を深めることができるでしょう。甲乙人という言葉は、さらなる歴史研究の素材として取り上げられるべきものです。

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