出光美術館

出光美術館

出光美術館は、東京都千代田区の丸の内と福岡県北九州市の門司港レトロ地区に位置する、東洋古美術を専門とした美術館です。この美術館は、出光興産の創業者である実業家、出光佐三の長年の美術品コレクションを基に1966年に開館しました。運営は東京の出光美術館が公益財団法人出光美術館、門司の美術館は公益財団法人出光佐三記念美術館が担当しています。

東京の出光美術館

東京の出光美術館は、帝国劇場と出光興産の本社が入居する帝劇ビルの9階に所在し、ロビーからは皇居外苑の美しい景観を望むことができます。ここでは、日本や中国の絵画、書跡、陶磁器といった、日本および東洋の古美術が中心に収集されています。特に、唐津焼や仙厓義梵による書画が豊富に揃い、約1000点に及ぶ作品が所蔵されています。また、ジョルジュ・ルオーやサム・フランシスなど、近現代西洋美術の作品も収められています。開館以来、新たな収集も続けられ、1983年に国宝である『伴大納言絵巻』を購入したほか、2019年には有名な若冲の『鳥獣花木図屏風』や応挙の『虎図』などを含む190点が新たに加わりました。

館内は2007年に全面改装され、通常の展示室に加えて茶室「朝夕菴」や陶片資料室を持つほか、ルオーとムンク専用の展示室も設けられています。この陶片資料室では、世界中の窯跡から発掘された陶磁器の破片が体系的に展示されています。2022年9月27日には、帝劇ビルと隣接する国際ビルヂングの一体再開発計画が発表され、2025年には一時閉館する予定です。

出光美術館（門司）

門司の出光美術館は、かつて大阪市や福岡市中央区にも分館がありましたが、消防法の制約により重要文化財の展示ができない福岡分館は閉館し、2000年に北九州市が提案した結果、門司港レトロ地区の大正期に建てられた出光の倉庫跡を改装し開館しました。2005年には部分改修を行い、2015年に完全に耐震化を進めるなどの改修工事を終え、2016年にリニューアルオープンしました。隣には創業者の出光佐三の生涯を紹介する「出光創業史料館」があります。

出光佐三の美術品収集

出光佐三の美術品の収集は、彼が19歳の時に購入した仙厓義梵の書画から始まりました。以降、戦後までにおよそ70年以上にわたって美術品の収集が続けられ、約1万件の収蔵品の中には国宝や重要文化財も多数含まれています。特に、仙厓の作品は象徴的な存在であり、出光美術館には彼の約千点の作品が収められています。

この美術館は単なる展示の場ではなく、特別展や講演会なども積極的に行っており、文化交流の場としても機能しています。出光美術館の収蔵品は、東洋古美術だけでなく、近現代美術やさまざまな分野にわたるため、様々な年代やスタイルの作品を楽しむことができます。展覧会やイベントを通して、訪れる人々に新たな発見と感動を提供しています。

出光美術館は、宇宙の時を超えた美術の旅へと誘ってくれる、貴重な文化資源であり、訪れる価値が十分にある場所と言えるでしょう。

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