仙厓義梵:禅とユーモアが織りなす、自由奔放な芸術家の人生
仙厓義梵(せんがいぎぼん、
1750年-
1837年)は、
江戸時代の
臨済宗古月派の僧侶であり、独特のユーモアと禅の精神が融合した
絵画で知られる著名な
画家です。
美濃国(現在の岐阜県)に生まれた仙厓は、11歳で出家し、各地を巡りながら修行を重ねました。39歳からは
博多の聖福寺の住持を務め、23年間その職に就きました。
晩年と画業
40代後半から本格的に
絵画制作を始め、その作品は生前から高い人気を誇り、多くの依頼が絶えませんでした。83歳で「絶筆の碑」を建て、筆を置くことを宣言したものの、結局は生涯を通して絵筆を握り続けました。彼の作品は、洒脱で飄逸な作風と、禅的な悟りを思わせる独特のユーモアセンスが調和し、見る者の心を捉えて離しません。
仙厓は奔放な性格で知られ、数々の興味深い逸話や
狂歌を残しています。例えば、黒田藩の役人からめでたい言葉を頼まれた際に「祖死父死子死孫死」と書き、役人を戸惑わせたというエピソードは有名です。これは一見不吉な言葉ですが、仙厓は「順序正しく死んでいけば家中に若死にするものがない」と説明し、役人を納得させたと言われています。
また、悪政を行う
家老を皮肉った
狂歌や、絵の依頼が絶えないことを便所に例えた
狂歌など、世相を風刺したユーモラスな作品も多く残されています。彼の辞世の句は「死にとうない」であったと伝えられており、仙厓の人間味あふれる生き様を象徴する言葉となっています。
作品と評価
仙厓の作品は、水墨画を中心に、簡潔な線と大胆な構図が特徴です。代表作として、『○△□図』、『指月布袋画賛』、『豊干・寒山拾得図屏風』などがあります。これらの作品は、
出光美術館をはじめとする各地の美術館や寺院に所蔵され、多くの人々に親しまれています。
昭和初期には「仙厓ブーム」と呼ばれるほどの研究熱が高まり、各地で多くの作品が発見され、新たな逸話や論考が発表されました。現在でも仙厓の
絵画は高い人気を誇り、各地で展覧会が開催されています。
仙厓義梵と禅
仙厓の作品からは、禅の精神が強く感じられます。簡潔な表現の中に深い意味が込められており、見る者に悟りを促すような力があります。彼の絵は、単なる芸術作品としてだけでなく、禅の教えを伝える媒体として重要な役割を果たしていると言えるでしょう。
参考文献
『出光美術館蔵品図録 仙厓』平凡社
中山喜一郎『仙厓の○△□:無法の禅画を楽しむ法』
弦書房
中山喜一郎 ・ 福岡美術館『仙厓 : その生涯と芸術』福岡市美術館協会
森本哲郎『この言葉!』〈
PHP新書〉
堀和久『死にとうない 仙厓和尚伝』〈新潮文庫〉
水上勉、泉武夫『水墨画の巨匠 第七巻 白隠・仙厓』
講談社
仙厓義梵は、自由奔放な生き方と、禅の精神を深く体現した稀有な
芸術家でした。彼の作品は、今もなお多くの人々に感動とユーモアを与え続けています。