出囃子 (落語)

出囃子の役割と歴史

落語の出囃子（でばやし）は、落語家が高座に上がる際に流れる特有の音楽です。これは寄席囃子の一部として位置づけられ、寄席や落語会においては、落語家だけでなく、様々な芸人が登場する際にも使用されることがあります。出囃子の起源は、かつて上方落語に限られていましたが、大正時代に東京でも取り入れられていきました。それまでは片シャギリという演奏のみが行われていました。

出囃子の構成と演奏

出囃子の演奏には、主に三味線、太鼓、笛、当り鉦といった楽器が用いられます。この演奏を担当する人々は「下座」や「お囃子」と呼ばれ、上方や東京の両地域で、三味線は専門の下座演奏家（全員女性で、「三味線方」と呼ばれる）が担当する一方、笛や太鼓は前座の落語家（「鳴り物方」という）によって演奏されます。また、戦前の上方落語では、演者が自らの芸を披露せずにお囃子のみを演奏することを「ヘタリ」と称していました。

出囃子に使用される曲は、落語家ごとに異なり、通の観客は曲を聴いただけで登場する落語家を予測できることがあります。たとえば、「野崎」の出囃子が流れると上方では「春團治や」、東京では「黒門町だ」と期待が高まります。そのため、出囃子は寄席の雰囲気を盛り上げる重要な要素です。

寄席囃子奏者の歴史

東京の寄席囃子

東京における出囃子の活用は、1924年前後の大正時代から始まりました。この時期に、 落語協会が設立され、様々なバックグラウンドを持つ三味線奏者が寄席でお囃子として常駐するようになりました。しかし、1960年代に入るとお囃子奏者の高齢化が進み、人材不足が深刻化しました。そのため、1979年には落語協会が「おはやし教室」を開催し、多くの参加者が集まりました。以降、国立劇場では、大衆芸能の寄席囃子のための研修が行われるようになり、現在では研修を受けた者のみが寄席囃子奏者として活躍しています。

寄席囃子研修生となるためには、中学卒業以上かつ原則的に45歳以下であり、長唄三味線の素養が求められます。選考には作文、実技試験、また面接が含まれており、全日制での2年間の研修が必要です。研修が修了すると、落語協会または落語芸術協会に所属し、寄席や落語会で演奏することとなります。

大阪の寄席囃子

大阪では、出囃子の選曲は落語家の雰囲気や芸風に応じて決定され、長唄を元とした曲が多く使用されます。時には出身地や個々の歌を反映した曲も選ばれます。また、近年では二つ目に昇進する際に、自身から出囃子のリクエストを行うこともあります。出囃子は一般的に二つ目以上の落語家が持つ特権となっています。

演目に合わせて出囃子を使い分ける落語家もおり、寄席においても他の演者との共演がある場合、その場合は協議により代用曲を使用するケースが見られるなど、柔軟な運用が行われています。

主な出囃子

寄席での落語に合わせた色物の出囃子も多く存在し、現役の芸人によるものも含めて数多くの曲があります。出囃子は、寄席全体の雰囲気を作り出し、観客との一体感を醸し出す力を持った重要な要素と言えるでしょう。

音源や資料

出囃子を楽しむためのCDや書籍が数多く販売されており、特に落語芸術協会や落語協会から企画されたものが人気です。また、音源としてはNHKやキングレコードからも出囃子に関するさまざまな企画が展開されています。

出囃子は、落語文化の一部であり、観客がその芸に引き込まれる大切な要素を形成しています。今後も多くの人々に愛され続けることでしょう。

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