出早比売命

伊都速比売命（いつはやひめのみこと）

伊都速比売命は、長野県諏訪地方に伝わる民間伝承、特に諏訪信仰において重要な女神として知られています。古くは出早比売命とも表記され、会津比売神の別名とも考えられています。

概要

伊都速比売命は、諏訪大社の祭神である建御名方神の御子神、出早雄命の娘とされています。諏訪固有の神と考えられていますが、阿波国（現在の徳島県）に鎮座する式内社、天村雲伊自波夜比売神社に祀られている伊志波夜比売命と同一神であるという説も存在します。

『大日本神祇誌』では、伊志波夜比売命は「建御名方命の孫にあたる出速雄命の娘であり、天村雲命の妃である」と記されています。また、『大日本地名辞書』には「信濃諏訪系に建御名方命の御子、出速雄命の娘に、出速姫命、あるいは伊自波夜比売神がある」と記述されており、両神の関連性を示唆しています。

これらの記述を踏まえ、『修補諏訪氏系図』では、「伊都速と伊自波夜は音訓が通じ、同一神である可能性が高い。天香語山命が越国を鎮護し、出速雄命が信濃国を治めていたという地理的な繋がりから、両家の縁を結び、自然な形で結婚に至ったのではないか」という結論を出しています。

系譜

伊都速比売命は、建御名方神と八坂刀売神との間に生まれた二十二柱の御子神の一柱である伊豆速男命が、洩矢神の娘である多満留姫を娶って生まれた神とされています。彼女には、可毛羽神、若木比売神、草奈井比売神、佐和恵多良六老彦神などの兄妹がいます。

また、『大日本神祇誌』によれば、伊都速比売命は天村雲命の妃であるとされています。

祀る神社

伊都速比売命を祀る主な神社として、阿波国（徳島県）の天村雲神社が挙げられます。この神社は、伊志波夜比売命を主祭神として祀っており、伊都速比売命との同一神説を裏付ける重要な根拠となっています。

関連事項

建御名方神（たけみなかたのかみ）
出早雄命（いではやおのみこと）
多満留姫（たまるひめ）
天村雲命（あめのむらくものみこと）

伊都速比売命は、諏訪地方の伝承と阿波国の神社との繋がりを示す興味深い神であり、古代の信仰や神話研究において重要な存在です。彼女の出自や神格は、様々な文献や伝承によって解釈が異なり、今後の研究によって新たな側面が明らかになる可能性も秘めています。彼女は、地域間の文化交流や古代信仰の多様性を物語る、重要な鍵となる神の一柱と言えるでしょう。

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