出早雄命

出早雄命（いずはやおのみこと）とは

出早雄命は、長野県を中心に信仰されている神様です。諏訪地方では、諏訪大社の祭神である建御名方神の御子神として知られています。

名称について

出早雄命は、文献や伝承によって様々な表記が見られます。主なものとして、出早雄神、出速雄命、伊豆速男神、伊豆早雄命、出早命、出早神などが挙げられます。

室町時代に書写された『諏訪上社物忌令之事』には「出止明神」という表記が見られ、諏訪上社の神楽歌集である『祝詞段』や『根元記』では「イスハイ」または「イツハエ」として登場します。また、幕末の『諏訪旧跡志』には「内県神 出速雄命」と記されています。

これらのことから、時代や地域によって様々な呼び名で親しまれてきたことがわかります。

概要

『日本三代実録』によると、貞観2年（860年）には「信濃国正六位上馬背神、飄別神、妻科地神、無位駒弓神、出速雄神」に従五位下が授与され、貞観15年（873年）には「信濃国従五位下出早雄神」が従五位上に昇格、元慶2年（878年）には正五位下となっています。

諏訪地方では、建御名方神の次男であり、父神の世継ぎとして諏訪を治めたという伝承があります。また、武居氏の家伝によると、父神の寵愛を受けた出早雄神は弟の意岐萩神から諏訪の地を譲り受け、共に鎮座したとされています。さらに、信濃国の開拓に功績を立てた13柱の御子神の一柱としても数えられています。

岡谷市にある出早雄小萩神社では、父神と協力して諏訪の開拓に貢献したと伝えられ、神社の社家の祖神ともされています。一方、皆神山に鎮座する熊野出速雄神社では、海津地域開拓の祖神であり、農耕の神として信仰されています。この神社の神官家は、かつて武政権に対して反乱を起こした歴史も持っています。

系譜

諏訪上社社家・守矢氏の家系図『神長守矢氏系譜』では、洩矢神の娘・多満留姫を娶ったとされています。一般的に、上社の大祝職を務めた諏訪氏の祖神とされています。また、早出氏の祖神とも言われており、出早雄命の後裔が出早を氏としていましたが、後に神の神威を恐れて苗字の「出早」の文字を傾倒したとされています。

出早雄命の子とされる神々には、以下のような神々がいます。

箭津安賀多神（八県宿禰神）
伊津早姫神（出早姫神）：蓼宮神社の祭神。
草奈井比売神
可毛羽神：可毛羽神社の祭神。
若木比売神：上水内郡若槻に祀られていると伝わる。
外安賀多神（外県神か）
内安賀多神（内県神か）
大県神

また、六老彦神だけを御子神として記載する系図や、片倉辺命、恵奈武耳命へと続く系図もあります。

祀る神社

出早雄命は、長野県内を中心に多くの神社で祀られています。主な神社は以下の通りです。

諏訪大社上社本宮摂社・出早社：門番神として崇敬され、イボ取りの神として知られています。
諏訪大社上社前宮摂社・若御子社：他の諏訪御子神を祀る神社とは異なり、22神が祀られています。
諏訪大社下社春宮摂社・若宮社：御子神13神を祀っています。
諏訪大社下社秋宮摂社・若宮社：御子神13神を祀っています。
出早雄小萩神社：下社摂社の出早雄神社と小萩神社を合祀したもので、西山田地区の産土神とされています。
出早雄神社（上田市）：古くは出配神社と呼ばれていました。
出早神社（高森町）
熊野出速雄神社：皆神山にあり、中世以降は北信地域熊野修験の聖地でした。
社子神社（長野市三輪）
芹田中神社（長野市稲葉）
野池神社（飯田市千代）
御社宮司社（箕輪町）

その他、各地の御社宮司社、十五社神社、神明神社、県外の神社でも祀られています。

まとめ

出早雄命は、諏訪地方を中心に深く信仰されている神様です。建御名方神の御子神として、また、地域の開拓神や農耕神として、人々の生活に深く関わってきました。その信仰は、現在も多くの神社で受け継がれています。

関連する神々

建御名方神
八坂刀売神
洩矢神
多満留姫

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