出羽ヶ嶽文治郎

出羽ヶ嶽文治郎の生涯と相撲界への影響

出羽ヶ嶽文治郎（1902年12月20日 - 1950年6月9日）は、山形県の出身で、かつて大相撲において著名な力士として名を馳せました。本名は斎藤文次郎で、旧姓は佐藤です。彼が身長200cm、体重200kgを超えた日本人力士として、昭和の初めから中頃まで活躍し、特に昭和40年代までには日本史上最高の体重を誇る人物とも言われています。

幼少期と相撲への道

出羽ヶ嶽は寒い気候の山形県南村山郡で生まれました。子供のころからその体格は異常で、小学校に入学時点で161cmの身長を誇りましたが、内気な性格で、教員と同じくらいの新入生となっても目立たないように過ごしていました。彼は巨体を気にするあまり、人前では姿を見せることを避け、読書に没頭する日々を過ごしたことが知られています。

故郷での奉公も思うようにいかず、最終的に東京で斎藤紀一という人物の元で育てられました。この紀一は文次郎の親戚であり、彼を励まし相撲の道へと導く重要な存在となりました。文次郎は勉強ができ、中等学校での成績も優秀でしたが、相撲界からの勧誘を受けて断り続けていました。しかし、最終的には紀一の強い勧めによって相撲界に身を投じることになります。

土俵入りと彼の成績

出羽ヶ嶽は1917年に出羽海部屋に入門し、四股名を「出羽ヶ嶽」としました。初土俵ではその体格に恵まれていたものの動きは鈍く、なかなか番付に名前が載ることができませんでした。しかし、栃木山守也から受けた指導が功を奏し、約8年後には新入幕を果たします。その後は体重を活かした力強い取組で、多くの対戦相手を恐れさせる存在となりました。特に彼の鯖折りは一世を風靡しました。

出羽ヶ嶽は一度も負け越すことなく関脇に昇進しましたが、以降のキャリアは厳しいものでした。重い体を持つがゆえに、稽古相手も見つからず、次第に体調を崩していきました。相撲界でも一時は期待されましたが、負傷や体調不良から相撲が取れず、最終的に三段目に陥落してしまいます。

引退後の生活と死去

出羽ヶ嶽は1939年に現役を引退し、田子ノ浦の名跡を名乗るようになります。引退後は東京都江戸川区で焼き鳥屋や花屋を経営し、生活を支えていました。晩年には体調を崩し、1950年に脳出血に襲われます。病床での最後の言葉は「犬と猫、頼むな」と言われており、彼の生前の深い愛情をうかがわせるエピソードです。

出羽ヶ嶽の遺体は、巨人症の研究のために解剖され、その結果は日本の医学界に貴重なデータをもたらしました。彼の死後、長らく研究の対象となり、骨格に関する研究が行われた結果として、多くの人々に関心を持たれてきました。

人物性とエピソード

出羽ヶ嶽は人間としても特異なキャラクターでした。相撲界での彼は大柄でありながら、内面的には非常に繊細で、他人から異形であることを恥じていたと言われています。そのため、普段はあまり目立たない生活を送り、市井では厄介者扱いされることもありました。

また、彼は多彩な趣味や人間関係を持ち、特に動物に対する愛情は深く、晩年は家族と共に幸せな日々を送ろうとしていました。出羽ヶ嶽の名声は今も相撲界に残り、故郷には等身大の像も設置されています。彼の生涯は、ただの力士の物語ではなく、巨人であったがゆえの苦悩と復活の歴史を彷彿とさせるものでした。

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