函館水電50形電車

函館水電50形電車は、1921年から1924年にかけて函館水電（後の函館市交通局、函館市電）が6両導入した路面電車です。

概要

当時、函館で路面電車事業を行っていた函館水電が、大阪府堺市の梅鉢工場に製作を依頼したヴェスティビュール付き丸屋根開放式大型ボギー車でした。設計認可日は1921年12月27日。車体色から「チョコレート電車」の愛称で親しまれました。

主な材料には、ケヤキ、サクラ、チークなどの高級木材が使用されました。当初は特等室（12人）と普通室（52人）の定員64人でしたが、特等室の評判が悪く、1924年に廃止。特等室を改造して普通室を増やし、定員は74人となりました。1923年には、50号車の特等室で電熱暖房の試験が行われ、良好な結果を得ています。この50形は、後の函館市交通部500形電車のモデルとなりました（530号車が改造され現存）。

仕様

台車：ブリル76E1
主電動機：ゼネラル・エレクトリックGE-231
製造車両：
47号：後に52号（二代目）に改番されたと推定
48号：車庫火災の原因になったと推定
49号：後に53号に改番されたと推定
50号：1923年に特等室で電熱暖房試験を実施
51号
52号
54号、55号：車庫火災時の復旧改番車と推定

運用

鮫川橋～大門間の複線化や、それに伴う新川～大門間の道路拡幅、新川の橋梁の拡幅、五稜郭公園前停留場にあるカーブの内側の道路を広げるなどの地上設備改良を経て、50形は投入されました。当初は中心部への乗り入れも計画されましたが、車体が大きいためカーブの通過が難しく、改良には多額の費用がかかるため断念されました。

廃車

1926年1月20日の新川車庫火災で2両が焼失。1両は梅鉢鉄工所、もう1両は自社工場で再生されました。車庫火災の原因は、48号車のトロリーポールの取り外し忘れによる漏電が有力視されています。この火災では、重傷者1名が出て、電車31両が焼失しました。その後、1934年3月21日の函館大火で全車が焼失し、廃車となりました。函館市への譲渡は行われていません（市営化は1943年）。

参考文献

走りました80年～函館市交通局路面電車開業80周年・市営交通発足50周年記念写真集　函館市交通局 1993年
続函館市史資料集（第1号）　函館市総務部市史編さん室　1971年
日本の市内電車-1895-1945-　和久田康雄　成山堂書店　2009年　ISBN 9784425961511
北海道の私鉄車両　澤内一晃・星良助　北海道新聞社　2016年

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