切れない糸

『切れない糸』は、坂木司による連作推理小説で、東京の商店街にあるクリーニング店「アライクリーニング」を舞台に物語が展開します。

あらすじ

グッドバイからはじめよう

先代店主である父、新井和夫の急死によって店を継ぐことになった息子、新井和也。彼は、クリーニングの仕事に不慣れながらも、様々な客の依頼に応じます。ある日、常連客の河野から、妻の衣類を引き取ってほしいと依頼を受けます。しかし、引き取った衣類は、普段クリーニングに出さないようなものばかり。不審に思った新井は、友人である沢田直之の力を借り、その謎を解き明かそうとします。

東京、東京

商店街に住む糸村麻由子。彼女は実家を出て、一人暮らしをしていましたが、新井は彼女の親から、娘の様子を見てきて欲しいと頼まれます。そこで、新井が目にしたのは、以前とは違う印象の糸村の姿でした。彼女は、なぜ服装の印象が変わったのか？その謎を解き明かすため、新井は沢田とともに糸村に迫ります。

秋祭りの夜

秋祭りの夜、新井は渡辺という男から、複数の衣類のクリーニングを依頼されます。その衣類は、水商売関係の者が着るようなものばかり。不審に思った新井は、沢田に相談します。沢田は、渡辺の職業をデリヘルではないかと推理します。そんな中、新井は渡辺から急ぎの依頼を受け、茂田とともに対応します。

商店街の歳末

年末になり、アライクリーニングの仕事も忙しくなってきました。新井は、茂田の仕事ぶりを見て、彼の過去が気になり始めます。そんな中、糸村から自身の部屋で怪奇現象が起きているという相談を受けます。沢田はいつものように推理を披露しますが、茂田の行動も気になり、新井は沢田にその理由を尋ねます。

続編 ゴルフ帰り同盟

物語から1年後、新井と沢田は喫茶ロッキーでいつものようにくつろいでいました。そこに、ゴルフ帰りの男たちが来店し、奇妙な注文をします。バラバラの料理を注文し、さらに追加を求める彼らの行動には、一体どんな意味があるのか？新井は沢田に謎解きを求めます。

世界観

『切れない糸』は、坂木司の他の作品とも世界観を共有しています。登場人物や商店街が他の作品にも登場したり、宅配便を扱った作品の繋がりがあったりと、作品同士の繋がりを楽しむことができます。

アライクリーニング

物語の主な舞台となるクリーニング店です。店主の新井和也は、先代の父親から店を継ぎました。集配はバイクで行い、洗濯は基本的に外注しています。

喫茶ロッキー

沢田がアルバイトをしている喫茶店です。マスターが不在の時は、沢田が店を切り盛りしています。新井は、喫茶ロッキーで沢田に相談することが多く、事件解決には欠かせない場所となっています。

登場人物

主要人物

新井和也
アライクリーニングの店主。22歳。お人好しで、頼まれると断れない性格。
沢田直之
新井の友人。喫茶ロッキーでアルバイトをしており、推理が得意な安楽椅子探偵。

アライクリーニング

松岡、竹田、梅本
アライクリーニングのパート従業員で、新井をサポートする女性トリオ。
新井和夫
アライクリーニングの先代店主で、新井和也の父。物語開始前に急死。
茂田鉄二
アライクリーニングのベテラン職人。アイロン掛けと仕立て作業を担当。

書誌情報

『切れない糸』
単行本版：2005年5月25日初版発行、ISBN 978-4-488-01205-2
創元推理文庫版：2009年7月17日初版発行、ISBN 978-4-488-45704-4
「ゴルフ帰り同盟」
『ミステリーズ!』vol.23 JUNE 2007、2007年6月15日発行、東京創元社、ISBN 978-4-488-03023-0

『切れない糸』は、日常に潜む謎を、温かい人間関係とともに描いた、心に残るミステリー作品です。

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