切幡寺

切幡寺（きりはたじ）

切幡寺は、徳島県阿波市市場町切幡に位置する高野山真言宗に属する寺院であり、得度山灌頂院と名付けられています。この寺院は四国八十八箇所の第十番札所であり、また阿波西国三十三観音霊場の第28番札所でもあります。本尊は千手観世音菩薩で、信者に広く尊崇されています。

本尊と特徴

本尊の真言は「おん ばさら たらま きりく」であり、寺のご詠歌には「欲心をただ一筋に切幡寺　後の世までの障（さわ）りとぞなる」という一句が含まれています。納経印は「当寺本尊、奥之院八祖大師」となっています。

歴史の概略

切幡寺の歴史は、修行中の空海（弘法大師）にさかのぼります。空海が衣服を修繕するための布を求めた際、機織の娘が自らの織りかけの布を切り分けて差し出しました。この行為に感動した空海は、彼女の願いを聞き入れ、千手観音の像を彫り、その後彼女自身も即身成仏を遂げるという伝説があります。この出来事を受けて、嵯峨天皇が寺院の建立を命じ、南と北にそれぞれ本尊が安置されることとなりました。切幡寺の名称も、この機織の娘の物語に由来しています。

伽藍の変遷

切幡寺はかつては堂塔伽藍二十四坊を有していましたが、1573年から1592年にかけて長宗我部元親の兵火により多くが焼失しました。その後、明治42年にも火災による損失がありましたが、現在の建物はその後に再建されたものです。

境内の見どころ

境内にはさまざまな施設があります。山門（仁王門）をくぐると、八大龍王堂や参道を進むための石段（杖無し橋）が待っています。この石段は333段あり、経木場や本堂へと続きます。経木場では毎年春分の日と秋分の日に、先祖の戒名を経木に記し供養する「経木流し」が行われます。

本堂は拝殿土間・本堂・奥殿の三重構造になっており、奥殿には秘仏の千手観音菩薩が安置されています。大師堂や不動堂、また重要文化財に指定されている大塔もあり、特に大塔は徳川家康の要請により建立されたもので、美しい二重塔が特徴です。

さらに、境内の各所にははたきり観音像や弁財天、虚空蔵菩薩が祀られており、訪れる人々に深い信仰の場とされています。

交通案内とアクセス

切幡寺へは公共交通機関や自動車で訪れることができます。最寄りの駅は阿波川島駅であり、そこから徒歩またはタクシーでのアクセスが可能です。また、周辺には駐車場も豊富に用意されており、参拝者は無料で利用できます。

このように、切幡寺は歴史と信仰が交差する地であり、多くの訪問者や巡礼者がその魅力に引き寄せられています。阿波西国三十三観音霊場の中でも特に重要な場所として、静かに心を落ち着ける空間を提供しています。

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