刈田嶺神社 (蔵王町遠刈田温泉)
刈田嶺神社について
刈田嶺神社（かったみねじんじゃ）は、奥羽山脈の蔵王連峰、その宮城県側の刈田岳東麓に位置する神社です。刈田岳山頂（標高1,758m）にも同名の神社があり、山頂の社を「奥宮」、麓の社を「里宮」と呼び、両社で一対となっています。この神社最大の特徴は、神体が夏季は山頂の奥宮へ、冬季は麓の里宮へと、季節ごとに遷座することです。蔵王連峰の「蔵王」という名は、かつて両宮が祀っていた蔵王権現に由来します。
季節遷座
里宮から奥宮への遷座は、刈田岳山頂へ至る蔵王エコーラインと蔵王ハイラインの開通に合わせて行われます。これらの道路は冬季閉鎖されるため、開通日は積雪量によって変動しますが、例年4月下旬頃に開通します。遷座前には、大崎八幡宮による雪かき奉仕が行われ、凍結した雪に埋もれた社殿や参道を復旧させます。
一方、奥宮から里宮への遷座は、秋の彼岸明けとなる10月第1日曜日に「御神体下山式」として執り行われます。両道路は、文化の日（11月3日）の数日後から昭和の日（4月29日）の数日前まで、約半年間閉鎖されます。
歴史
神社の歴史については、宮城県神社庁と蔵王町教育委員会で異なる説があるため、それぞれを記述します。
宮城県神社庁の説
宮城県神社庁によると、当社の創建は不明ですが、人皇二代綏靖天皇を祀ったという伝承が残っています。社伝では、役小角が白鳳8年（679年）に大和国（現在の奈良県）から蔵王権現（天之水分神、国之水分神）を吉野山に鎮座し、その後、文武天皇の時代（697～707年）に不忘山に蔵王権現を遷し、「蔵王山」と改名したとされています。平安時代には神仏習合が進み、神社名も「蔵王大権現」と呼ばれるようになりました。
前九年の役の頃には、安倍氏が氏神として神殿を改築し、戦国時代には最上出羽守が当社を崇敬し、神田を寄進しました。上杉氏は家臣の甘糟氏に守護を任せ、その後、伊達氏が守護神として家臣の片倉小十郎に守らせ、21年ごとの遷宮を始めました。伊達政宗は仙台藩を立てると、仙台城の鬼門除けとして当社を重視しました。明治維新の神仏分離で、明治5年（1872年）に「水分神社」と改称、明治8年（1875年）に「刈田嶺神社」となりました。旧社格は郷社です。
蔵王町教育委員会の説
蔵王町教育委員会によれば、蔵王山頂の蔵王大権現は、天武天皇8年（679年）に役行者の叔父である願行が勧請したとされています。蔵王大権現社は、蔵王一帯の修験者を統括し、大刈田山東麓の「願行寺」が管理していました。平安時代末期には奥州藤原氏の庇護を受け、願行寺は繁栄しましたが、奥州藤原氏の滅亡と共に衰退しました。戦国時代には兵火で焼失し、山之坊、宮本坊、嶽之坊の3坊に減少しました。
その後、山之坊は廃れ、宮本坊は宮蓮蔵寺、嶽之坊は金峯山蔵王寺嶽之坊となりました。江戸時代後期には御山詣りが流行し、嶽之坊は多くの参詣者を山頂の蔵王大権現へと導きました。雪深い蔵王山では冬の参詣が困難なため、毎年10月8日から翌年4月8日まで、御神体を遠刈田の「蔵王大権現御旅宮」に遷座しました。この御旅宮は嶽之坊と同じ場所にあるなど、嶽之坊と蔵王大権現社は深く結びついていました。明治維新の神仏分離に伴い、明治2年（1869年）7月に「蔵王大権現」は「蔵王大神」と改号。同年9月には「天水分神と国水分神」の2柱であるとの解釈から「水分神社」に改称されました。この時期に修験道の「蔵王大権現」を管理していた真言宗の嶽之坊は、神道の神社となった当社と合一したと考えられています。明治8年（1875年）に「水分神社」は「刈田嶺神社」と称するようになりました。
五輪堂
刈田嶺神社の参道には、吹き出物やいぼが治ると伝わる五輪堂があります。元々は遠刈田温泉街近くの住宅地にありましたが、2024年春の暴風で屋根が損壊したため、刈田嶺神社参道に移設され、同年10月25日に落成式が行われました。
アクセス
鉄道
高速バス
自動車
同名の神社
山形県側にも、蔵王大権現(刈田嶺神社)(山形市下宝沢)、刈田嶺神社（山形市蔵王半郷字石高）、刈田嶺神社（上山市金谷）があります。
関連項目
- - 蔵王山神社
外部リンク
- - 苅田嶺神社（陸奥国苅田郡）
- - 蔵王町の歴史と文化財 公式ホームページ「どきたんドットコム」
- - 金峰山蔵王寺
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