刎橋

刎橋（はねばし）とは

刎橋は、江戸時代の日本で発展した独特な架橋技術です。その最大の特徴は、橋脚を必要とせずに谷や川を渡ることができる点にあります。この技術は、現代の建築にも応用されているカンチレバー橋の原型とも考えられています。

刎橋の構造

刎橋の基本的な構造は、以下のようになります。

1. 刎ね木の設置: まず、橋を架ける両岸の岩盤に穴を開け、そこに「刎ね木」と呼ばれる木材を斜めに差し込みます。この刎ね木は、橋の中央に向かって突き出すように設置されます。
2. 刎ね木の重ね: 次に、先に設置した刎ね木の上に、さらに別の刎ね木を重ねて突き出します。この時、上の刎ね木は下の刎ね木に支えられるように設置され、少しだけ長く突き出します。
3. 刎ね出し: このように、刎ね木を順々に重ねていくことで、橋桁を中空に遠くまで伸ばしていきます。この一連の作業を「刎ね出し」と呼びます。
4. 上部構造の構築: 刎ね出した刎ね木を足場にして、橋の上部構造を組み立てます。最後に、板を敷き詰めれば、橋として通行できるようになります。

この構造により、橋脚を立てる必要がなく、深い谷や川にも橋を架けることが可能になりました。

現存する刎橋

木造の刎橋は現存するものがほとんどありません。山梨県大月市の猿橋は、鋼製の橋桁に木材を貼り付けて、江戸時代の刎橋の構造を復元したものです。猿橋では、斜めに突き出した刎ね木や横の柱の上に屋根を設け、雨による腐食から保護しています。かつては、富山県黒部市の愛本橋や長野県の雑炊橋も刎橋でしたが、現在は残っていません。

一方で、石造りの刎橋は、九州や中国地方など西日本を中心に多数残っています。これは、石材が木材よりも耐久性が高く、風雨による劣化に強いためと考えられます。

また、日光の神橋は、刎橋と桁橋を組み合わせた珍しい構造をしています。

愛本橋の復元模型

富山県黒部市のうなづき友学館内にある黒部市歴史民俗資料館には、刎橋時代の愛本橋の一部を1/2縮尺で復元した模型が展示されています。この模型を見ることで、刎橋の構造をより深く理解することができます。

関連項目

カンチレバー橋：刎橋と同様の原理で、片持ち梁を利用した橋。
黒部市歴史民俗資料館：うなづき友学館内にあり、刎橋の模型を展示。

外部リンク

* うなづき友学館

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