刑事警察 (ドイツ)

ドイツ語圏における刑事警察（クリポ）

刑事警察（Kriminalpolizei）、通称クリポは、ドイツ、オーストリア、ドイツ語圏のスイスにおいて、刑法犯罪の捜査を専門とする警察組織です。

ドイツにおける刑事警察

ドイツ連邦共和国では、各州の警察に刑事警察部門が置かれ、州法に基づき組織されています。これらの部門は、州政府の内務大臣に活動を報告します。連邦刑事庁や連邦警察の捜査部門は、クリポとは呼ばれません。ドイツの警察活動は基本的に地方警察の管轄であり、州の刑事警察が、ほとんどの刑法犯罪捜査を担当します。

刑事警察の構成員は、地方警察の優秀な警官から選抜されます。厳しい選考を経て、選ばれた者は警察大学で犯罪学の専門教育を受け、3年間の見習い期間を経て、正式な捜査官となります。連邦警察から刑事警察への異動は非常に稀です。

刑事警察の捜査官は私服で活動し、被害者や目撃者との面談、証拠収集、容疑者の取り調べを行います。また、行方不明者の捜索や盗難資産の回収も担当します。捜査官は、担当区域や専門捜査班に配属されます。麻薬密輸や組織犯罪対策では、連邦警察や税関職員と共同捜査チームを編成することもあります。

刑事警察には、国家保安部門という独立した部門があり、政治的動機による犯罪捜査を担当します。情報機関は警察権を持たないため、捜査が必要な場合は、刑事警察の州保安部門に引き継がれます。

起源

刑事警察の起源は、1799年のプロイセン・ベルリンに遡ります。当初は6人の警察官が刑法犯の捜査を担当し、私服での捜査権が与えられました。1811年にはベルリン警察服務規定に職務内容が記載され、1820年には刑事の職種が導入されました。1872年、刑事警察は制服警察と区別され、独立した組織として創設されました。19世紀末には、ドイツ全域で刑事警察が設立されることとなりました。

ナチス・ドイツにおける刑事警察（1936年 - 1945年）

1936年、刑事警察はゲシュタポと統合され、保安警察（ジポ）の一部となりました。ラインハルト・ハイドリヒが長官を務め、1944年まではアルトゥール・ネーベが局長でした。ネーベがヒトラー暗殺計画に関与したため、処刑された後は、フリードリヒ・パンツィンガーが局長に就任しました。

刑事警察は、秩序警察とともに犯罪捜査を行い、各地に支署を持っていました。主な捜査対象は、強姦、殺人、放火などの重大な刑法犯罪でした。特に戦時中は、空襲による混乱に乗じた窃盗犯「火事場泥棒」が社会問題となり、刑事警察の重点捜査対象となりました。

刑事警察の職員は、親衛隊（SS）の一員と見なされ、親衛隊や秩序警察の階級を持つことが可能でした。しかし、多くは「刑事捜査官」のような独自の階級名を使っていました。一部の上級幹部は、アインザッツグルッペンのようなユダヤ人絶滅部隊の指揮官も務めました。

関連作品

ロバート・ハリスの歴史改変小説「ファーザーランド」（1992年）では、第二次世界大戦でドイツが勝利した世界を舞台に、刑事警察に勤めるSS少佐クサヴィアー・マルヒが主人公として登場します。この作品では、アルトゥール・ネーベがSS上級大将として登場し、戦後20年間も刑事警察の局長を務めている設定となっています。

また、1994年には、この小説を原作としたテレビ映画「ファーザーランド」が製作され、ルトガー・ハウアーが主演を務めました。

参考文献

ロバート・ハリス著、後藤安彦訳『ファーザーランド』文藝春秋、1992年、ISBN 4-16-752718-9

関連項目

ドイツの警察
* 州警察 (ドイツ) (Landespolizei)

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