別れていい友

『別れていい友』（わかれていいとも）は、1983年の夏にフジテレビ系列の『金曜劇場』枠で放送されたテレビドラマです。1983年 7月29日から9月2日にかけて、毎週金曜日の22:00から22:54まで全6話が放送されました。その独特なタイトルは、当時同じフジテレビで人気を博していたバラエティ番組『笑っていいとも!』をもじったものであり、放送開始当時から注目を集めました。

このドラマが描くのは、些細なすれ違いから妻に家出されてしまった一人のサラリーマンが、二人の幼い子供たちと向き合いながら送る、どこか切なくも温かい日々です。主人公は、酒造メーカーの宣伝課長として働く佐伯京平。中流家庭を築き、平穏な生活を送っていたはずが、多忙を理由に妻・則子とのコミュニケーションが不足し、さらに部下からの手紙を則子が見たことで誤解が生じ、突如として則子に家を出て行かれてしまいます。

残された京平は、小学4年生の長女・舞子と小学1年生の長男・信一の世話を一人で担うことになります。家事に不慣れながらも、子供たちのために奮闘する京平の姿がコミカルに、そして時に切なく描かれます。そんな佐伯家に、思わぬ人物が入り込んできます。それは、京平に密かに想いを寄せていた部下の野村由美子です。則子の家出を知った由美子は、一方的に佐伯家に入り込み、子供たちの面倒を見るようになり、京平を大いに困惑させます。

一方、家を出た妻・則子も新たな生活を模索します。大学時代の先輩で独身のデザイナー、鳥居町子のマンションに身を寄せ、独身生活を謳歌しようと試みます。町子は則子にとって自立した理想的な女性に見えますが、町子自身は則子の家庭生活に憧れを抱くという、お互いにないものを求める関係性が描かれます。また、則子は独身と偽って接近してきた中西徹という男性を、悪気なく利用してしまう場面も見られます。

佐伯家を取り巻く人々も物語に彩りを添えます。京平の直属の上司である宣伝部長・長谷川公介は、京平夫婦の仲人を務めた人物であり、京平は別居の事実を隠そうとします。しかし、長谷川自身もまた、裏では遊び歩いているという一面を持っています。長女の舞子は、外面はおとなしいものの内には強い芯を持ち、両親の気持ちを敏感に察するしっかり者。母親代わりとなって弟の面倒を見ます。長男の信一は、やんちゃで明るいムードメーカーですが、時折大人を驚かせるような鋭い指摘をすることも。子供たちの視点から描かれる親への思いも、このドラマの重要な要素となっています。

このドラマは、夫婦間のすれ違いやコミュニケーションの難しさ、そして一度壊れかけた家族の再生の可能性といった普遍的なテーマを扱っています。全6話という短い期間ながら、登場人物それぞれの立場や心情を丁寧に描写することで、現代社会における夫婦のあり方や、本当の家族の絆とは何かを視聴者に静かに問いかけます。ユーモアを交えつつも、現実の厳しさや人生のほろ苦さも描き出すことで、多くの視聴者の共感を呼んだ作品と言えるでしょう。

主要キャストには、主人公・佐伯京平を古谷一行が演じ、妻・則子を市毛良枝が務めました。子供たちを山下陽子と岩淵健が演じ、野村由美子を森下愛子、長谷川公介を中条静夫、鳥居町子を佐藤オリエ、中西徹を小倉一郎が演じるなど、実力派俳優たちが集結し、人間味あふれるキャラクターたちを魅力的に演じました。

制作スタッフとしては、プロデューサーを中村敏夫、脚本を金子成人、演出を杉田成道と鈴木恵悟が担当。音楽は南こうせつが手掛けました。制作著作はフジテレビです。

わずか6話の放送期間ながら、ユーモアとペーソスを織り交ぜながら描かれた本作は、夫婦関係や家族のあり方について深く考えさせられる作品として、今なお記憶に残るドラマの一つです。

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