別失八里等処行尚書省

別失八里等処行尚書省

別失八里等処行尚書省は、モンゴル帝国が中央アジアを統治するために設立した行政機関である。この組織は、第2代皇帝オゴデイの時代から第4代皇帝モンケの時代まで存在し、1260年代には消滅した。モンゴル帝国の領域拡大の過程において、中央アジアでの統治に重要な役割を果たした。

モンゴル帝国と中央アジアの関係

モンゴル帝国が中央アジアと接触を持ったのは1210年代初頭、トルキスタンの天山ウイグル王国の君主が自発的に投降してきた時だった。この際、チンギス・カンは武力によらず降伏した王に好意を示し、厚遇を与えた。1218年には西遼を征服し、1220年代にはホラズム・シャー朝をも撃破して、領土を拡大していった。

とはいえ、モンゴル帝国の中央アジア統治に関する詳細な記録は少なく、主要な歴史書が編纂されなかったため、その具体的な支配方法は不明な点が多い。残された史料によれば、モンゴル人の王たちは都市を統治し、既存の組織を尊重しつつ収税を行っていたと考えられる。特にダルガチを用いて税収を管理する方式は、華北と中央アジアで共通に見られた。

トルキスタン総督府の設立

オゴデイの治世中には、「ウイグリスタンからジャイフーン河に至る」地域が一つのエリアとして整理され、マスウード・ベクが統治の責任者に任命された。この中央アジアの管理組織は、税収の確保と権益の調整を行う役割を持っていた。オゴデイの時代には人口調査も行われ、地域によって異なる基準が設けられた結果、中央アジアにおいては「丁（成人男性）」が基本とされた。

別失八里等処行尚書省の設立経緯

オゴデイの死後、内部の対立が続く中で1251年にモンケが即位し、以前の方針を引き継ぐ形で中央アジアを含む地域を統治するカ構想が進められた。『元史』によると、モンケのもとで「別失八里等処行尚書省」という名称が正式に用いられるようになり、ノガイやマスウード・ベクがその事務を担当した。

モンケの時代には商人の税問題が取り上げられ、商業活動を行う者が本籍地を離れていくことが問題視されるなど、経済制度にも調整が加えられていた。これにより、税基準が明確に定められることとなった。

解体とチャガタイ・ウルスの台頭

1260年、モンケの突然の死により、後継者を巡る争いが生じ、モンゴル帝国は大きな変動の渦中に入る。クビライとアリクブケ間の帝位継承戦争が勃発し、西方ではフレグが征服地域を自立的に支配することとなった。こうした統治機構の混乱の中で、別失八里等処行尚書省はチャガタイ・ウルスに吸収されてしまった。

その後、アルグの急死により中央アジア情勢が再び不安定となり、オゴデイ家のカイドゥが新たな勢力を形成。中央アジアは様々な勢力間の争いに巻き込まれることになった。この結果、かつての別失八里等処行尚書省の地域は、チャガタイ・ウルスによって新たに支配されることになる。

このように、別失八里等処行尚書省はモンゴル帝国の拡大とともに誕生し、複雑な歴史の中でその運命を辿った重要な機関であった。

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