別府八景

別府八景とは

別府八景は、1930年（昭和5年）に制定された、大分県別府市とその近郊にある8つの景勝地です。当時、別府温泉の観光資源として、地獄めぐりに対比する形で「極楽めぐり」として売り出されました。絵葉書や小唄などで盛んに宣伝された結果、多くの観光客に知られる名所となりました。

しかし、現在では観光地としての魅力が薄れている場所もあり、別府八景全体を巡る観光コースはあまり見られなくなっています。高崎山や由布院など、個々の観光地は今も人気がありますが、別府八景という概念自体が薄れているのが現状です。

歴史

大正時代、別府の名勝開発の一環として、数々の景勝地が選定されました。「海と山と街の素晴らしい眺め」「豊かな自然」「人の手が加えられた名所」をキーワードに、別府三勝や奥別府十勝とともに、別府八景が制定されました。

別府三勝や奥別府十勝が「素晴らしい眺め」や「豊かな自然」に重点を置いた選定基準だったのに対し、別府八景は「人の手による名所」も対象としたのが特徴です。浜脇公園や鶴見ヶ丘などがその例です。これらの景勝地は、観光客の増加に大きく貢献し、特に別府八景は広く親しまれました。

戦前は、別府地獄めぐりと並ぶ別府観光の目玉として、別府八景の絵葉書が盛んに作られました。しかし、戦後になると、浜脇公園の景観変化や鶴見園の衰退などにより、別府八景は次第に忘れられていきました。由布院も、別府の奥座敷から独立した観光地へと変化し、昭和40年代には別府八景という言葉を聞く機会はほとんどなくなりました。

別府八景

高崎山

現在も観光地として人気が高く、ニホンザルの餌付けで有名です。高崎山は大分市に位置していますが、戦前は別府観光の一部として捉えられていました。山頂には、豊後守護大友氏の城跡である高崎山城の遺跡があります。山頂からは大分市方面の景色は見えますが、別府湾方面はあまり見えません。

浜脇公園

かつては松原公園、別府公園と並ぶ別府三大公園の一つでした。現在の浜脇中学校の場所にあり、今の浜脇公園とは異なる場所です。浜脇温泉は歓楽街として栄え、その近くの浜脇公園は、市民や観光客の憩いの場でした。別府湾の眺めが素晴らしく、浜脇の遊郭の瓦屋根が波のように見える景色が有名でした。しかし、時代の流れとともに寂れ、現在は中学校となっています。

乙原・観海寺

観海寺温泉や乙原からの別府湾の眺めは、昔から観光客に親しまれていました。乙原は、八幡朝見神社の社地があった場所で、別府遊園（現在のラクテンチ）ができてからはケーブルカーで登れるようになり、桜やツツジの名所として知られています。乙原の滝は、ラクテンチの裏から遊歩道を通って行くことができ、散策コースとしても人気がありました。滝の近くには休憩所や売店が設けられたこともありましたが、現在は訪れる人も減り、遊歩道も少し荒れています。

鶴見ヶ丘

観海寺温泉の崖下一帯を指す地域で、鶴見地獄や八幡地獄といった大規模な地獄があったことから、地獄めぐりの拠点となっていました。1925年には、歌劇団を持つ鶴見園という遊園地ができましたが、戦後閉鎖され、跡地は住宅地や商店街に変わりました。八幡地獄は公園に、鶴見地獄は寺院の境内となり、観光名所の面影は薄れています。

由布院

現在は大分県を代表する観光地として全国的に有名ですが、当時は別府の奥座敷として、別府観光の一環として訪れる人がほとんどでした。別府八景に選ばれたのも、そのためです。由布岳周辺の草原や狭霧台からの大パノラマ、金鱗湖に映る由布岳の美しさ、豊かな温泉が観光客を魅了しました。

実相寺山

別府湾を一望できる小高い丘で、仏舎利塔が建っています。別府湾や高崎山、大分、佐賀関などを見渡せる絶景スポットです。春には菜の花が咲き、市民の憩いの場となっています。夜には夜景を楽しむこともできます。

柴石渓流

柴石温泉付近の渓流は、流れが速く水も澄んでいて美しく、渓流のすぐそばには露天風呂や打たせ湯が設けられていました。お湯に浸かりながら渓流を眺めることができ、観光客に人気でした。しかし、護岸工事などにより、往年の景観は失われつつあります。

日出海岸

日出町の海岸からは、別府を一望できるだけでなく、高崎山や大分、佐賀関まで見渡すことができました。鹿鳴越連山の稜線も美しく、松屋寺の大蘇鉄や暘谷城跡などの名所もあり、別府観光と合わせて訪れる人が多くいました。現在でも美しい景色は見られますが、別府観光に含まれることはほとんどありません。

別府八景は、かつては多くの観光客を魅了し、別府の観光を盛り上げる上で重要な役割を果たしました。しかし、時代の流れとともに忘れ去られつつあります。それでも、それぞれの場所には独自の魅力があり、その歴史を振り返ることで、別府の新たな魅力を発見できるかもしれません。

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