別府地獄めぐり

別府地獄めぐり：沸騰する大地の芸術と歴史

別府地獄めぐりは、大分県別府市にある数々の独特な温泉地、通称「地獄」を巡る人気の観光コースです。これらの地獄は、それぞれ異なる泉質や色、そして独特の景観を持つ自然湧出の源泉で、別府温泉の豊かな地熱活動を象徴する存在となっています。2009年には、海地獄、血の池地獄、白池地獄、龍巻地獄が国の名勝に指定され、その価値が認められています。

地獄めぐりの歴史：やっかい者から観光名所へ

「地獄」という呼び名自体は古くから用いられており、1694年の『豊国紀行』にも記載されています。かつては危険な場所として避けられていた地獄も、別荘地開発などを契機に整備が進み、安全に観覧できるようになりました。1910年、海地獄が観光施設として入場料を徴収したことが、商業化の始まりとされています。

大正時代以降は自動車による遊覧が盛んになり、昭和初期には噴出を促進するための掘削工事なども行われました。鉄輪地獄、龍巻地獄、無間地獄など、多くの地獄が次々と開発されましたが、開発競争によって泉源の湧出量が低下する問題も発生し、1920年代には開発は頭打ちとなりました。

1928年の別府市中外産業博覧会を機に、観光客の増加に対応するため、本格的な交通インフラ整備が急がれました。亀の井ホテル創業者の油屋熊八は、同年、亀の井自動車（現在の亀の井バス）を設立し、地獄めぐり遊覧バスの運行を開始。この際に考案された女性バスガイドは、全国に先駆けた取り組みでした。七五調による軽妙な観光案内は評判を呼び、地獄めぐりの人気を不動のものとしました。現在も亀の井バスによる地獄めぐりは運行されており、国内最古の歴史を持つ定期[[観光バス]]として知られています。

別府地獄組合加盟8つの地獄

別府市には多くの地獄が存在しますが、地獄めぐりコースに含まれるのは、別府地獄組合に加盟する8つの地獄です。海地獄、鬼石坊主地獄、かまど地獄、鬼山地獄、白池地獄、血の池地獄、龍巻地獄の7つと、山地獄です。これらの地獄では、共通観覧券が利用できるほか、亀の井バスを利用した遊覧では、昔ながらの七五調によるガイドを楽しむことができます。

各地獄の特徴

海地獄: コバルトブルーの美しい色をした、別府で最も広大な地獄。オオオニバスの栽培や、温泉卵も名物です。
鬼石坊主地獄: 熱泥が吹き上げる様子が僧侶の頭に似ていることから名付けられました。鬼石地獄と新坊主地獄を合わせた園地です。
かまど地獄: 6つの異なる地獄を一度に楽しめる場所。近年はアニメ『鬼滅の刃』の聖地としても注目されています。
鬼山地獄: ワニ園を併設した地獄。別名「ワニ地獄」とも呼ばれ、約100頭のワニが飼育されています。
白池地獄: 噴出時は透明だが、空気に触れると白濁する特徴を持つ。熱帯魚館も併設されています。
血の池地獄: 酸化鉄により赤く染まった、歴史ある地獄。足湯や、地獄の湯を利用した土産物も販売されています。
龍巻地獄: 30～40分間隔で噴出する間欠泉。迫力ある噴出は必見です。
山地獄: 水蒸気を利用したミニ動物園を併設。カピバラやフラミンゴなど、様々な動物を見ることができます。

地獄組合非加盟の地獄

別府地獄組合に加盟していない地獄も存在します。これらの地獄は、定期[[観光バス]]のコースには含まれていませんが、それぞれ独自の特色を持っています。

坊主地獄: 高温の泥が煮え立つ様子が特徴。大分県の天然記念物に指定されています。
地獄温泉ミュージアム（旧金竜地獄）: 多くの仏像と植物園を併設した施設。現在は地獄としての営業は休止し、ミュージアムとしてリニューアルオープンしています。
明礬地獄: 湯の花生産小屋を見学できる場所。江戸時代から続く湯の花生産技術は国の重要無形民俗文化財に指定されています。
乙原地獄（観音地獄）: ラクテンチ内に位置する地獄。規模は縮小していますが、見学可能です。
* その他閉鎖された地獄：鶴見地獄、八幡地獄、権助地獄、板地八幡地獄、朝日間歇地獄、無間地獄、三日月地獄、紺屋地獄、庄屋地獄、今井地獄、雷園、雷地獄、鉄輪地獄、十万地獄、堀田地獄、照湯地獄、（旧）釜戸地獄など、かつては存在したものの、現在では閉鎖されている地獄も数多くあります。

別府地獄めぐりの魅力

別府地獄めぐりは、単なる温泉観光地ではなく、自然の驚異と歴史、そして人々の知恵が織りなす独特の世界です。それぞれの地獄が持つ個性、そしてその背景にある歴史を巡ることで、別府温泉の深い魅力に触れることができるでしょう。

もう一度検索