高崎山

高崎山：別府湾に臨む歴史と自然の宝山

大分県大分市西部、別府市、由布市にまたがる高崎山は、別府湾に突き出すようにそびえ立つ、標高628.4メートルの山です。由布岳や鶴見岳などからなる火山群の南東端に位置し、約50万年前の更新世中期に活動した溶岩ドームであるとされています。現在は火山活動は停止しており、穏やかな山容を見せています。

高崎山は、瀬戸内海国立公園に含まれており、日本山岳会東九州支部が選定した『大分百山』の一つにも選ばれています。豊かな自然に恵まれたこの山には、野生のニホンザルが生息しており、山麓にはそれらを観察できる高崎山自然動物園があります。動物園で餌付けされた猿たちは、観光客に親しみやすく、高崎山を代表する観光スポットとなっています。

一方、別府湾とは反対側の南側には、田ノ浦海岸や柞原八幡宮からアクセスできる南登山口があります。そこから山頂まで続く登山道「高崎山セラピーロード」は整備されており、登山を楽しむこともできます。頂上からは別府湾や周囲の山々を一望できる絶景が堪能でき、多くの登山客を魅了しています。

高崎山：歴史の舞台

高崎山は、古くから戦略的に重要な場所として認識されてきました。四方を見渡せる地形から、かつては『四極山（しはつやま）』と呼ばれ、それが転じて『柴津山』とも呼ばれていたようです。明治時代には、高崎山よりも『四極山』の名称の方が一般的であったという記録も残されています。

奈良時代には、烽火台が設置され、防衛拠点としての役割を担っていました。山頂には高崎山城が築かれ、その堅固な城塞は難攻不落として知られていました。南北朝の動乱や島津氏の豊後侵攻の際には、大友氏の重要な拠点となり、激しい戦いの舞台となりました。しかし、1593年、大友氏の滅亡とともに廃城となり、現在は城跡の遺構が残るのみです。

高崎山の存在は、別府市と大分市間の交通にも大きな影響を与えました。別府湾に突き出した高崎山のために、両市間の陸路は難所として知られていました。別府と大分を結ぶ道は、高崎山の裏側にある銭瓶峠や赤松峠を越える峠道が主に利用され、近道をとろうとすれば、海路を利用するか、干潮時を狙って崖下の細い危険な道を歩くしかありませんでした。

1694年にこの地を訪れた貝原益軒は『豊国紀行』の中で、別府から大分への道の険しさを詳細に記しています。彼の記述からは、当時の交通事情の困難さが伝わってきます。別府と大分を結ぶ湾岸沿いの道路が開通したのは、明治8年（1875年）になってからのことです。その後、別府湾沿岸の整備が進み、国道10号別大国道が建設されました。高崎山の裏手には、大分県道51号や東九州自動車道（旧大分自動車道）が整備され、現代の交通網が形成されました。

高崎山は、自然と歴史が織りなす貴重な場所です。雄大な自然景観、歴史的遺産、そしてそこに暮らす野生動物たち。これらの魅力を満喫できる、大分を代表する観光地となっています。

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