別府温泉観光産業大博覧会

別府温泉観光産業大博覧会：温泉と観光、そして抗争の影

1957年（昭和32年）、大分県別府市において、約2ヶ月間に渡り開催された『別府温泉観光産業大博覧会』。本博覧会は、九州横断道路の着工を記念して開催され、観光と温泉をテーマに、多くの来場者を集めました。

博覧会の盛況と象徴的な建造物

会場となったのは、現在の野口原総合運動場である旧別府競馬場跡地。50もの施設やパビリオンが建設され、初日には1万人を超える来場者で賑わいました。会期中の総来場者数は約80万人にも上り、当時の別府市にとって大きな経済効果をもたらしたことは間違いありません。

博覧会の目玉として計画されたのが、別府タワーです。しかし、資金調達の問題から、完成は閉幕間際の5月10日となり、当初の予定からは遅れての公開となりました。それでも、タワーは博覧会のシンボルとして来場者の注目を集め、別府市の新たなランドマークとなりました。

影を落とした暴力団抗争

しかし、この華やかな博覧会には、暗い影が付きまとっていました。博覧会の利権を巡り、大分県内の暴力団、石井組と井田組の間で激しい抗争事件が発生したのです。この「別府抗争」または「別府事件」と呼ばれる抗争は、別府市議殺害事件や新聞社襲撃事件などの凶悪事件を引き起こし、大きな社会問題となりました。この抗争は、のちに凶器準備集合罪の新設にも影響を与えたとされています。

別府市の博覧会史における位置づけ

別府市では、過去にも大規模な博覧会が開催されています。1928年（昭和3年）の中外産業博覧会、そして1937年（昭和12年）の別府国際温泉観光大博覧会など、別府温泉を活かした観光産業振興を目的とした博覧会が開催され、それぞれ市の発展に貢献しました。別府温泉観光産業大博覧会も、こうした歴史の流れの中にある重要なイベントと言えるでしょう。しかし、同時に、暴力団抗争という暗い歴史も背負っていることを忘れてはなりません。

まとめ

別府温泉観光産業大博覧会は、別府市の観光産業発展に大きく貢献した一方で、暴力団抗争という負の側面も持ち合わせていました。この博覧会は、戦後の高度経済成長期における地方都市の活性化と、社会問題の闇を同時に示す象徴的な出来事と言えるでしょう。華やかなイベントの裏に潜む影を知ることは、歴史を正しく理解するために重要です。そして、その教訓を活かし、未来の都市開発において、経済効果のみならず、社会全体の安全と安定を確保することが重要であることを改めて認識する必要があります。

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