利根川図志

『利根川図志』は、江戸時代末期の安政年間（1855年～1858年）に、下総国布川村（現在の茨城県利根町布川）の医師であった赤松宗旦によって著された、利根川中・下流域の詳細な地誌です。この書物は、単なる地理的な記録にとどまらず、当時の人々の生活、文化、風俗を生き生きと伝えています。

成立と出版

序文には安政2年（1855年）の記述があり、安政4年（1857年）には取材協力者への配布が完了していたことが記録されています。幕府からの正式な出版許可を得て、安政5年（1858年）には広く頒布されるようになりました。

著者：赤松宗旦

赤松宗旦（本名：赤松義知）は、文化3年（1806年）に生まれ、代々医師を務める家系の二代目でした。彼は地域社会に貢献しながら、『利根川図志』を著しました。

内容

この書は、現在の茨城県古河市から千葉県銚子市に至る利根川中・下流域を対象としています。各地の名所、旧跡、特産物、風土、風習などが、豊富な挿絵とともに紹介されています。挿絵の制作には、葛飾北斎、葛飾為斎、山形素真、湖城喜一、玉蘭斎貞秀、一立斎広重といった著名な絵師たちが参加しており、その質の高さが特筆されます。

続編の構想

宗旦は『利根川図志』の続編として、利根川上流域に関する記述を構想していました。実際に、草稿や関連資料も残されています。しかし、文久2年（1862年）に57歳で宗旦が亡くなったため、続編は未完となりました。

構成

本書は、利根川流域の地理、歴史、文化を詳細に記述しており、その構成は地域ごとに分けられています。

利根川の地理と流れ
各地域の歴史的背景
名所旧跡の詳細な記述
特産品や産業の紹介
地域ごとの風俗や習慣
挿絵による視覚的な情報提供



『利根川図志』は、江戸時代末期の利根川流域の姿を今に伝える貴重な資料であり、当時の人々の生活や文化を深く理解するための重要な手がかりとなっています。

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