利賀川

利賀川

利賀川（とががわ）は、富山県西部を流れる庄川の有力な支流の一つに数えられる、国が管理する一級河川です。その流域は、富山県の南西部に位置する南砺市の利賀地域に広く分布しており、流域の最奥にあたる南端部、金剛堂山系の山々に源を発しています。

地理

利賀川が流れる地域は、親河川である庄川や百瀬川の流域と合わせて、山深い「五箇山」として知られる一帯に含まれます。しかし、庄川沿いに開けた五箇山の集落と比べても、利賀川流域はより隔絶された地形であり、立ち入ることは容易ではありません。

利賀川は、建設中の利賀ダムや既存の水無ダムなどがある中流域から上流側で、その流れが大きく三つに分かれます。本流となる利賀川の筋に加え、定倉谷（じょうくらだに）と水無谷（みずなしだに）という、それぞれ特徴的な谷を刻む支流が合流しています。

利賀川本流は、利賀川ダムがある地点から見て概ね南西方向へと延び、富山県の最南端にあたる地点を源とする流れです。一方、定倉谷は本流や水無谷と比較すると短い流れですが、その上流域には広大な高層湿原である水無平湿原が広がっています。この湿原はミズバショウをはじめとする多様な高山植物の貴重な宝庫となっており、特に夏期には、これらの植物を観察しようと多くの人々が訪れる観光地となっています。また、水無谷は利賀川ダムから北西方向へと続く流れで、本流に匹敵するほどの長さを持ちます。この谷筋の大部分は、活動的な断層として知られる牛首断層の構造線に沿って形成されています。水無谷のさらに奥まった場所には、南砺市利賀地域の中でも最も山深い場所に位置する水無集落がありますが、戸籍上の人口はわずか1名という、極めて小さな集落となっています。

利賀川ダムから下流に目を転じると、川は両岸が切り立った広大な峡谷を形成しながら流れます。この険しい地形の中にわずかに開けた平地が点在しており、それが利賀盆地として知られる一帯です。利賀川はそのまま深い山間部を流れ下り、最終的に利賀村仙野原地先で、庄川の下流に位置する庄川小牧貯水池へと静かに注ぎ込んでいます。

地質と資源

利賀川流域には、古くから続く飛騨変成岩帯が広範に分布しており、花崗岩や、かつて鉱業資源ともなった晶質石灰岩（大理石）が多く見られます。さらに、この地域からは珍しい鉱物も産出します。特に利賀村の高沼（たかぬま）周辺では、宝石としても知られるコランダム、鉄分を多く含むアルマンディンガーネット（鉄礬柘榴石）、そして石墨などが採れることが知られています。

過去には、こうした流域の地質特性を活かした資源開発も行われました。南砺市利賀村の高沼地区では、豊富に産出する晶質石灰岩が採掘され、石灰鉱業が営まれていました。また、同じく高沼からは鱗片状の黒鉛も産出し、かつて試掘が行われた記録が残されています。さらに、利賀川上流の奥大勘場（おおかんば）にはスカルン鉱床が存在し、かつては硫化鉄や鉛などの鉱物が産出されました。しかし、その産出量は決して豊富ではなかったようで、地元では子供たちの遊び歌の中で「デンデコ（産出量が乏しい様子を表す言葉）」と歌われるほど、生産性は高くありませんでした。

主な支流とダム

利賀川の主な支流としては、先に述べた定倉谷、水無谷に加え、悪瀬谷などがあります。

流域には治水・利水のためにいくつかのダムが設けられています。現在、国により大規模な多目的ダムである利賀ダムの建設が進められています。このほかにも、豆谷ダム、千束ダム、そして利賀川ダムといった既存のダムが存在し、利賀川の水を管理しています。

観光地

利賀川流域を訪れる人々にとっての主要な観光地としては、豊かな高山植物が観察できる水無平湿原や、休憩施設や情報提供拠点としての役割を果たす道の駅利賀などがあります。

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