到漑

到漑の生涯と業績

到漑（とうがい、477年 - 548年）は、南朝梁の著名な官僚であり、文人として広く知られています。彼の字は茂灌で、彭城郡武原県が本貫です。南朝宋の驃騎将軍、到彦之の曾孫であり、弟には到洽がいました。

幼少期と経歴の始まり

到漑は、斉の中書郎の到坦の子として生まれました。幼いころに父を失い貧しい家庭環境で育ちましたが、聡明で才能に恵まれ、早くから任昉に見出され、その名声を高めていきます。彼は王国左常侍として官職に就いた後、軍法曹行参軍や尚書殿中郎など、さまざまな役職を歴任しました。

湘東王蕭繹が会稽郡の太守となると、到漑はその下で軽車長史としての任務を果たし、軽車府と会稽郡の事務を代行しました。武帝は到漑を師として尊重し、彼の存在を蕭繹に報告しました。母の死に際しては辞職し、喪に服しましたが、喪が明けた後も数年にわたり菜食と布衣での質素な生活を送りました。

大同5年（539年）には吏部尚書に就任し、さらに郢州長史や江夏郡太守なども歴任し、やがて左民尚書として入朝します。しかしながら、政治的な事件に巻き込まれ、金紫光禄大夫に左遷されることもありました。それから散騎常侍・侍中・国子祭酒として再度任命されました。

晩年と死

歳月が経つ中で病を患い失明、最終的には金紫光禄大夫・散騎常侍としての地位を受けて引退し、私邸での静かな生活を送ることにします。549年、彼は息子の張綰と劉之遴に子孫を託し、薄葬を希望してこの世を去りました。享年72歳であり、彼の業績は文集として20巻まとめられました。

人物像とエピソード

到漑は、身長が八尺であり、行儀や作法に優れていました。清廉潔白を志し、質素な生活を好み、音楽や美しい女性を好むことはありませんでした。彼の部屋には寝床があるのみで、贅沢な物は一切なく、冠や履物も10年ごとしか新調しないという徹底ぶりでした。朝の服は穴が開いているのを補修しながら着用し、清廉な生活を心がけていました。

武帝とは囲碁を楽しむ仲で、囲碁対局はじばらく続き、夜明けまで及ぶこともありました。彼の邸宅には奇石があり、武帝が賭けとして『礼記』を与えたという逸話も残っています。

家族との仲も良好で、到漑と弟の到洽は特に親しい関係を築いていました。到洽が亡くなった後、到漑はその家を寺に改造し、煩わしい生活を絶ち、終身菜食へと切り替えました。自らの生活を清め、朝夕には僧侶と共に経を誦む慎ましい日々を送りました。

また、蔣山の延賢寺は到漑が創建したものであり、彼の社会貢献の一端を示しています。交遊を好まない性格ではありましたが、朱異・劉之遴・張綰とは志を共にする友人として深い関係を築いていました。病を抱えながらも、彼の家を訪問して酒を捧げる仲間の姿があったことが彼の人柄を物語っています。

当時の人々は到漑と到洽兄弟を陸機と陸雲の兄弟に喩え、湘東王の蕭繹もこの兄弟たちを称賛する詩を贈っています。

伝記資料

• - 『梁書』巻40 列伝第34
• - 『南史』巻25 列伝第15

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