前島 (長崎県時津町)

前島の概要

前島（まえじま）は、長崎県西彼杵郡時津町子々川郷に位置する小さな島です。大村湾の南西部にあり、島にはわずか2世帯5人が暮らしています（2010年10月1日現在）。この島は独特の地理的特徴を持ち、本土からは150メートルほど離れています。東西約900メートル、南北約650メートルの面積を誇り、総面積は約0.263平方キロメートルです。島の南西部には、小さな入り江があり、さらに北西部には属島のダケク島があります。このダケク島は干潮時に砂州が現れ、前島と繋がることがあるため、自然環境の変化を楽しむことができます。

地理と生活様式

前島では果物の栽培が盛んで、特にミカンが主力の生産物です。現在ではミカンのほかにブドウやカキも栽培され、農業が島の重要な生活基盤となっています。しかし、本土へのアクセスは、個人所有の小型ボートに頼らざるを得ず、38057や長崎大学の臨海研修所がある対岸との交流が限られています。郵便物や新聞は、配達されずに本土の小屋まで自ら取りに行く必要があるため、住民の生活は非常に質素で、独自のコミュニティが形成されています。

歴史的背景

前島には、重要な歴史的遺産である前島古墳群があります。この古墳群には、合計8基の円墳が存在し、特に第3号墳と第4号墳は属島のダケク島にあります。1990年に行われた考古調査によって、これらの古墳は6世紀後半から7世紀後半に使用されていたと判明しました。調査の中で、須恵器として知られる古い陶器の破片も発見されましたが、残念ながら1947年に開墾作業が行われた際に、二基については破壊されてしまいました。

戦後の食糧難の時期には、国の政策により引揚者の入植が進み、島の山々が開墾されてミカン畑が作られました。この過程で、本土に向かうための移動手段として小舟が使われ、島の子供たちは本土の学校に通うために漕ぎ手となる練習を重ねました。1960年代には、住人たちの協力により海底ケーブルが導入され、電気と電話が島に届くようになりましたが、飲料水は今も井戸水に依存しています。このように、過去の厳しい時代を乗り越えながら、現在に至っています。

現在の島の状況

前島は、今も人口が減少し続けており、2018年には2軒の家屋が人が住む場所となっている超限界集落の状態です。海の南側にいくつかの家屋が見られますが、住民たちは生活を支えるために限られた資源を共有しながら暮らしています。また、定期航路はないため、島の交通手段は各自の自家用船に頼らざるを得ません。このように、前島は美しい自然環境を保ちながらも、厳しい現実と向き合っている小さな島なのです。

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