前澤範

前澤範：日本の造形家と特撮美術の巨匠

前澤範（まえざわ のり、1942年12月22日生まれ）は、日本を代表する造形家であり、映画美術監督としても知られています。長野県出身の彼は、武蔵野美術大学で学びながら、舞台美術の分野に関わりを持ち、造形の道を歩み始めました。大学を卒業後、友人の高橋章からの誘いを受け『大怪獣ガメラ』に参加し、映画美術の世界へと進出します。

当初、フリーの造形家として活動していた前澤は、大映、東宝、松竹、日活、東映といった多くの映画制作会社に携わることとなります。この頃、特撮美術の三上陸男や彫刻家の池田宗弘、特撮の鈴木昶と親交を深め、その後の活動にも大きな影響を与えることになるのです。

1971年、特撮テレビ番組『仮面ライダー』の美術を担当していた三上陸男から参加の要請がありましたが、他社との契約が残っていたため、残念ながら断ることに。その後、映画『ガメラ対深海怪獣ジグラ』の手伝いを経て、エキスプロダクションとの専属契約を結び、さらなる飛躍を遂げることになります。

特に『好き! すき!! 魔女先生』や『超人バロム・1』など、東映のヒーロー作品に携わることでその名声を高めていきました。しかし、1972年には体調を崩し、一時造形部への異動を余儀なくされます。造形部では工場長として8人のスタッフが公正に休暇を取得できるよう、労働環境の改善に尽力しました。

1981年にはエキスプロを退社し、「レインボー造型企画」を設立します。初めて手がけた仕事である『大戦隊ゴーグルファイブ』や『宇宙刑事ギャバン』、さらには『ロボット8ちゃん』など、多くの東映ヒーロー作品において彼の才能が発揮されました。特に『宇宙刑事ギャバン』で提案した真空蒸着によるメッキスーツは、当初は反対意見が多かったものの、プロデューサーの吉川進によって採用され、今日に至るまで重要な技術とされています。

2023年には、レインボー造型企画の社長を息子の前澤將に譲り渡し、2024年からは会長として新たな役割を担うことになりました。前澤の長いキャリアの中で、多くの印象的な作品が生まれてきたことは、彼の造形における情熱と技術の結晶です。

エピソード

特に興味深いエピソードとして、特撮テレビ番組『仮面ライダーX』第13話に登場する怪人・ユリシーズのマスクがあります。このマスクは、前澤が学生時代に制作したライフマスクが使われたもので、美術を担当していた高橋章が無断で使用したというエピソードがあります。このようなユーモアも彼のキャリアの一部となっています。

また、前澤は口のあるマスク造形にこだわりを持ち、『特捜ロボ ジャンパーソン|特捜ロボ_ジャンパーソン』の際には、撮影会が終わった後でもマスクを修正するという徹底ぶりを見せました。彼の作品は、単なる造形物を超えた表現力を持つものとして、観る人に強い印象を与え続けています。

前澤範の功績は、日本の特撮文化において重要な位置を占めており、彼の存在はこれからも多くの人々に影響を与え続けることでしょう。

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