前田利政

前田利政の生涯

前田利政（まえだ としまさ）は、安土桃山時代から江戸時代前期にかけて活躍した武将および大名であり、前田利家の次男として1578年に尾張の荒子城で生まれました。母親の名はまつで、彼の家系はその後の日本の歴史において重要な位置を占めることになります。

経歴の始まり

天正6年、母のまつと父の前田利家のもとに生まれた利政は、父が豊臣秀吉に従ったことにより、文禄2年には能登国の七尾城の城主となります。この年、彼は豊臣姓を下賜され、名実ともに豊臣家の一員となりました。利政はその後、小丸山城に移り、従兄の前田利好が七尾城に留まることとなります。

1595年の文禄4年、利政は羽柴氏の与えられ、慶長4年（1599年）には父から所領を分与されて大名となります。しかも、同年には大坂城の詰番衆としても務めるようになります。

関ヶ原の戦いとその後

利政の人生の中で大きな転機となるのが、慶長5年の関ヶ原の戦いです。この戦いでは、兄の利長と共に東軍に参加する筈でしたが、道中ですでに強く結束していた西軍の大聖寺城攻撃を行ったのち、利長が金沢に引き返すことを決断します。この背景には、利政の妻子が石田三成の人質となっていたため、彼が出陣できなくなったという説があるのです。

利政はその後、石田方への可能性も指摘されています。見瀬和雄によると、彼は事態の急展開により病気を装い、出陣しないことを選んだ可能性があるとされます。

戦いが終わり西軍が敗北すると、利政は自身の能登の所領を失い、これが兄の利長に与えられます。その後、彼は京都の嵯峨に隠遁し、宗悦と名乗るようになります。この時期には、本阿弥光悦とも親交を結んだとされ、文化的な交流も行われていたことが伺えます。

慶長19年からの大坂の陣では、両陣営からの誘いを受けつつも、彼は中立を選んで行動します。この姿勢は、その後の豊臣方からの誘いには乗らなかったことで家康から評価され、10万石の大名に取り立てられる打診を受けますが、あくまで関東方への忠節を考え、これを辞退しました。

ただし、利政が大名に取り立てられなかった背後にはさまざまな事情があったと指摘されています。特に、母の芳春院の影響力や、戦時中の彼の行動を許さなかった兄の利長の反発があったと考えられています。

最後の日々

寛永10年、利政は京都の町人・角倉与市の家で55年の生涯を閉じます。彼の墓所は京都市北区の大徳寺に位置しています。また、彼の子である直之は、叔父である加賀藩主の前田利常に仕官し、前田土佐守家を立てました。

利政の生涯は、家族や歴史のうねりの中での選択と葛藤によって語られ、豊臣政権の崩壊の中でどのように行動したのかが、彼の人物像をより深く理解する手助けとなっています。

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