前翼型滑空機

前翼型滑空機（MXY6）について

前翼型滑空機は、大日本帝国海軍において開発された実験的な動力付き滑空機であり、略符号は「MXY6」として知られています。この機体は、戦闘機の新たな可能性を探求する過程で生まれ、特に局地戦闘機の運用に向けた研究開発の一環として位置付けられました。

開発の背景

1942年、海軍航空技術廠の技術者である鶴野正敬大尉が前翼型航空機のコンセプトを提案しました。この型式のメリットは、兵装を機体の前方に効果的に配置できる点にあり、日本本土の防衛や長距離爆撃機の迎撃を目指す局地戦闘機としての特性を備えていました。これに基づき、研究開発が開始されました。

設計と製造

前翼型滑空機の具体的な設計作業は、1943年の3月に始まり、空技廠の山本晴之技師が主な設計を担当しました。その結果、7月には茅ヶ崎製作所で機体製作が始まり、9月には1号機が完成しました。最終的に生産されたのは2機で、これらは横須賀や木更津で試験飛行が実施されました。

試験飛行には鶴野大尉がパイロットとして参加し、前翼型戦闘機のための基礎設計に必要なデータが収集されました。これにより、前翼型戦闘機の試作計画が見えてきたことから、1944年には海軍より震電の試作が命じられました。

機体の仕様

前翼型滑空機は、震電とほぼ同じサイズを持ち、日本内燃機製の「せみ一一型」エンジンを装備しています。このエンジンは推進式の配置で、機体は木製構造と羽布張りが採用されています。また、坐席は並列複座となっており、金属製の固定脚による降着装置が装備されています。主翼の前縁にはスロット翼があり、操縦性や安定性の面でも優れた特性を誇っています。

主な諸元は以下の通りです：

• - 全長: 9.66 m
• - 全幅: 11.12 m
• - 全高: 4.21 m
• - 主翼面積: 20.5 m²
• - 全備重量: 640 kg
• - エンジン: 日本内燃機 せみ一一型 水平対向4気筒（離昇32 hp）×1
• - プロペラ: 木製4翅
• - 乗員: 2名

曳航に用いられたのは九七式艦上攻撃機であり、これにより前翼型滑空機の特性を活かしながら飛行試験が行われました。

文献

本機に関する詳細な情報は、野沢正著の『日本航空機総集 愛知・空技廠篇』や『日本航空機総集 九州・日立・昭和・日飛・諸社篇』などの参考文献に記されています。これらの資料は、前翼型滑空機の歴史的背景や技術的特性に関する貴重な情報を提供しています。

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