前門大街

前門大街は、北京市の中心部を南北に走る約1キロメートルの大通りで、西城区と東城区の境界に位置しています。南は天橋地区、西は大柵欄地区、東は鮮魚口地区と隣接し、北には天安門広場が広がります。この通りは、明清時代から続く歴史的な商業地区であり、全聚徳（北京ダックで有名な老舗）や同仁堂（漢方薬の老舗）、張一元（お茶の老舗）など、中国を代表する老舗が軒を連ねています。下町風情が色濃く残る繁華街として知られ、その賑わいから「北京の浅草」と呼ばれることもありました。

歴史と変遷

かつて前門大街は、「五牌楼」と呼ばれていました。これは、通りの入口に6本の柱と5つの梁を持つ牌楼（中国式の門）が建っていたことに由来します。しかし、この牌楼は1958年の都市改造の際に撤去されました。2001年になり、鉄筋コンクリートで再建されましたが、交通の便を考慮して、6本の柱のうち2本のみが地面に接する構造に変更されました。その後、2008年の北京オリンピック開催に合わせて、前門大街は大規模な再開発が行われました。

2004年に始まった再開発事業は、2008年5月28日に完了し、オリンピック開幕前日の8月7日に一般公開されました。この再開発により、清代末期から民国時代初期の街並みが再現され、歩行者天国となりました。牌楼も清代の様式に基づいて再建され、国内外の観光客から注目を集めるようになりました。再開発後1年間で、来客数は延べ5000万人を超えたとされています。

路面電車の復活

再開発の目玉の一つとして、1924年から1958年まで運行されていた路面電車が復活しました。2009年1月1日から正式に営業運転を開始したこの路面電車は、銅製の鈴を鳴らして歩行者に注意を促していたことから、「鐺鐺車（チンチン電車）」と呼ばれていました。新たに再現された路面電車は、開業当時の車両を模していますが、最新式の電気二重層コンデンサを搭載した充電式車両で、架線を必要としません。1両編成で運行され、約800メートルの区間を時速5キロメートルで片道約10分かけて走行します。

周辺情報

前門大街の周辺には、かつて多くの胡同（北京の伝統的な路地）が残っていましたが、再開発によってその数は減少しました。また、前門大街には、六必居（漬物の老舗）、都一処（焼売の老舗）など、多くの中華老字号（老舗ブランド）が集まっています。

アクセス

北京地下鉄2号線の前門駅が最寄りの駅です。

ギャラリー

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