剱持松二

剱持松二：波瀾万丈の棋士人生

剱持松二(1934年7月21日-2016年1月7日)は、日本のプロ将棋棋士である。東京都出身、荒巻三之九段門下で、棋士番号は73。2000年3月に引退するまで、将棋界に数々の足跡を残した。時に「松寿」を名乗るなど、多彩な一面を持つ人物でもあった。

順位戦と「若手潰し」

1961年度には東西対抗勝継戦で優勝、1962年と1963年には順位戦で連続昇級を果たすなど、1960年代は現役プロとしてのピークを迎えた。七段から八段への昇段には19年を要したが、その昇段祝賀会には150名もの参加者が集まる盛況ぶりだった。

しかし、彼のキャリアは華々しい活躍だけでなく、順位戦における独特の記録でも知られる。B級2組で5回、C級1組で4回、C級2組で2回と、降級点取得回数11回という記録は、将棋界でも類を見ない。また、順位戦で抹消された回数もB級2組で3回、C級1組で2回と、5回に及ぶ。

引退間際まで、若手棋士にたびたび勝利を収めたことから「若手潰し」として恐れられた。特に1988年度の順位戦C級1組では、後に竜王位を獲得する羽生善治に勝利し、その昇級を阻止したエピソードは有名である。このエピソードからも、彼の棋力と勝負勘の鋭さが伺える。

大山康晴・升田幸三との関係と棋界への貢献

人柄が良く、大山康晴十四世名人と升田幸三九段からもかわいがられたというエピソードからも、彼の温厚な人となりがうかがえる。また、将棋連盟の裏方として、スポンサー集めや募金活動にも尽力した。特に三菱電機との関係が深く、将棋会館建設や早指し将棋選手権開始時には多額の寄付金を得るなど、将棋界の発展に大きく貢献している。

さらに、プロレス好きで知られ、三菱電機が当時日本プロレスの中継スポンサーだったことから、力道山と親交があったという逸話も残っている。力道山のアマチュア将棋三段の免状を贈呈したという話も、彼の幅広い交友関係を示している。

多彩な才能と「器用貧乏」

将棋棋士としての活動以外でも、株式投資や不動産に手を出した時期もあったという。数億円単位の浮き沈みを経験するなど、波乱万丈な投資生活を送ったようだ。また、ICのパターン設計にも才能があり、日立や東芝などのメーカーから設計を依頼されていたという。ゴルフやカラオケも楽しむなど、多様な趣味を持っていた彼は、自身を「器用貧乏」と評していた。

加藤一二三九段との師弟関係

晩年、加藤一二三九段の師匠として知られている。剱持の方が年上でありながら、加藤がプロ入りしてから師匠となったという異色の師弟関係は、加藤の師匠であった南口繁一が死去した後の事情によるものだ。荒巻三之九段の弟子の剱持が、加藤の師匠となったという経緯である。

しかし、二人の関係は単なる師弟関係を超えていた。升田幸三九段を共通の知人として、過去に何度も升田邸で顔を合わせ、互いの気持ちを通じ合わせていたという裏話も残されている。

棋士としての足跡

1948年、6級で奨励会に入会。1954年に初段、1956年に四段でプロ入りを果たした。その後、順調に昇段を重ね、1993年に八段に昇段。2000年に引退、2013年に引退棋士昇段規定により九段に昇段した。通算成績は399勝660敗。主な成績として1961年度の東西対抗勝継戦優勝がある。1973年には日本将棋連盟より功労者表彰、1996年には現役勤続40年表彰を受賞している。

2016年1月7日、心不全のため死去。

剣持松二は、棋士として、そして人として、多様な才能と魅力を持った稀有な存在であった。彼の波乱万丈な人生は、後世の将棋界に長く語り継がれるであろう。

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