荒巻三之

荒巻三之九段：将棋界に貢献した実力者と人情家

1915年3月28日生まれの荒巻三之は、日本の将棋界に名を刻んだ九段棋士です。花田長太郎九段を師事し、1937年のプロ入り以降、持ち前の力戦と深い読みで数々の対局を戦い抜きました。棋士番号は20番。東京府（現在の東京都）出身です。

順位戦での戦い

荒巻の棋士人生は、順位戦での活躍と苦闘の歴史でもありました。第1期順位戦（1946年度）から参加したものの、当初は六段で暫定B級からのスタート。思うような結果を残せずC級に降級するなど、序盤は苦戦を強いられました。しかし、第3期順位戦（1948年度）ではC級2組第1組で全勝、その後も7勝2敗で1位となり、B級昇級を果たします。七段に昇段した彼は、第5期順位戦（1950年度）で、加藤博二、斎藤銀次郎らと8勝4敗で三つ巴の首位争いを繰り広げます。プレーオフを勝ち抜き、見事A級に昇級。八段に昇段し、念願のA級順位戦への参戦を果たしました。

A級での戦いは、名人経験者である塚田正夫への勝利など、幾多の好勝負を残しました。しかし、大山康晴、升田幸三といった強豪棋士を前に2勝6敗と苦杯を舐め、1期でB級に陥落。第13期順位戦（1958年度）を最後に引退しました。将棋連盟から贈九段の申し出を受けたものの、それを固辞した逸話も残っています。1993年10月27日、呼吸不全のため78歳で永眠。死後、九段の段位を追贈されました。

棋風と人となり

荒巻の棋風は、主に居飛車を得意とし、力強い攻めを特徴としていました。持ち前の鋭い読みと大胆な攻めは、多くの将棋ファンを魅了しました。また「海坊主」という愛称で親しまれ、その人柄は周囲に温かい風を吹き込みました。

日本将棋連盟総務部では、長年にわたってその達筆を生かし、免状や賞状の執筆を多数担当。その正確さと美しさは、連盟に多大な貢献を果たしました。1982年には免状執筆30年表彰を受賞しています。

弟子と加藤一二三との深い縁

荒巻には、多くの弟子がいました。その中でも特筆すべきは、加藤一二三との関係です。加藤は、師匠である南口繁一から剱持松二へと師匠を変えた際に、その理由として荒巻との深い繋がりを挙げています。加藤と荒巻は家族ぐるみの付き合いがあり、その縁が師弟関係の変更に繋がったのです。

まとめ

荒巻三之は、順位戦での激闘、力強い棋風、そして温かい人柄で知られる、将棋界に多大な貢献を果たした棋士でした。A級昇級という偉業だけでなく、日本将棋連盟での貢献や後進の育成など、その功績は計り知れません。彼の功績は、後世の将棋界に長く語り継がれることでしょう。 将棋界に名を刻んだ名棋士の生涯は、多くのファンに感動と勇気を与え続けています。彼の棋譜やエピソードを通じて、これからも多くの人にその魅力が伝わっていくことを願ってやみません。

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